最新記事

地球

波間に消えた第8の大陸「ジーランディア」、想定より5億年古かったことが判明

2021年9月2日(木)16時30分
青葉やまと

ジーランディアは、ニュージーランド・ニューカレドニア周辺地域に現存する大陸地殻 wikimedia

<地下のラボで砂粒をより分ける地道な研究が、地球の過去の姿を明らかにした>

小さな島国であるニュージーランドの周囲の海域には、ジーランディアと呼ばれる大陸地殻が広がっている。ニュージーランドの南東から北西にかけての領域に広がり、北西の端はオーストラリア大陸の沖合にまで迫る。

その面積は490万平方キロほどに達しており、オーストラリアと比べると3分の2ほどというサイズ感だ。その一部はニュージーランド北島・南島やニューカレドニア島などとして海面上に顔を覗かせているが、全体の94%が海面下に沈んでいる。ほぼ姿を隠していることから「失われた大陸」の異名が付けられ、1990年代後半から地質学者たちの興味を掻き立ててきた。

そんなジーランディアについて、新たな発見がここ数ヶ月で注目を集めている。採集された花崗岩のサンプルをニュージーランドの研究者が分析したところ、10億年から13億年ほど前に形成された岩石であることがわかった。これまでジーランディアの成立時期は約5億年だとするのが定説であったが、大陸として独立する前に属していた超大陸も含めると、その倍ほどの歴史を持っていたことになる。従来はジーランディアは若すぎるとして大陸と認めない考え方もあったが、再考を迫るものとなりそうだ。

実は存在しない、「大陸」の定義

研究はニュージーランドのGNSサイエンス社に勤めるローズ・ターンブル博士らが研究を進め、その成果をまとめた論文が今年5月、地質学誌『ジオロジー』に掲載された。

ジーランディアは第8の大陸ともいわれるが、何をもって「大陸」と判断するかについては、実は地質学の世界にも統一的な定義はない。論文を共同執筆したヨシュア・シュワルツ博士は米ナショナル・ジオグラフィック誌に対し、「真に厳格な大陸の定義がないことは、地質学のダークな秘密なのです」と語っている。博士は米カリフォルニア州立大学ノースリッジ校で地質学を研究しており、専門は花崗岩だ。

一般的には大陸を認定する際、規模や成立時期などが判断材料となるが、ジーランディアの場合は成立年代が浅すぎることがネックになっていた。独立した大陸ではないと位置付ける学者もあったが、今回の発見により、第8の大陸とみなす動きが加速しそうだ。

ピンセットを頼りに

ジーランディアの中心部には、北東から南西部にかけて、花崗岩を多く含有する地質帯が貫いている。ターンブル博士とシュワルツ博士らはこの領域と陸地部分が交わるニュージーランド南部に注目し、2ヶ所から花崗岩のサンプル計169点を採集した。

これを分析したところ、マグマに含まれるミネラル分が結晶化した「ジルコン」が抽出された。ジルコンは非常に頑丈であり数億年単位でその性質を保つうえ、結晶化の過程でウランを含んでいることが多い。博士たちはサンプルにウラン・鉛年代測定法を適用し、花崗岩の成立年代の特定に成功した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、2カ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中