最新記事

地球

波間に消えた第8の大陸「ジーランディア」、想定より5億年古かったことが判明

2021年9月2日(木)16時30分
青葉やまと

ジルコンの抽出は、花崗岩を物理的に砕くことから始まる。ある程度までは機械的にふるい分けることができるが、採集的には顕微鏡を覗き込みながら手作業での根気強い分類が必要となる。博士たちは窓のない地下室の研究室に閉じこもり、粒子が風で舞わないよう、ピンセットの先に鼻の脂をつけて分別作業を続けたという。

11億年前の地球の歴史

これまでの研究により、ジーランディアは超大陸から分離し、その後海底に消えていったことがわかっている。今から5億年ほど前、地球上にはゴンドワナ大陸と呼ばれる超大陸が存在した。ゴンドワナ大陸は今から3億年前の時点で北アメリカ大陸およびユーラシア大陸と衝突し、パンゲア超大陸を形成する。その後パンゲアは徐々に分裂し、現在の主要な大陸を形成していった。

今からおよそ8500万年前ごろになると、ジーランディアはこのパンゲア大陸から完全に分離する。米CNNはこの時点で、ジーランディアには豊かな熱帯雨林が広がり、恐竜たちが生息していたはずだと紹介している。そこから時を経て環太平洋火山帯(リング・オブ・ファイア)が出現するが、この時期にジーランディアの大部分が海底に消えていった。

近年ではジーランディアは独立した大陸として扱われつつあるが、10億年超という年齢が今回明らかになったことで、この認識にさらに強固な根拠が加わることになりそうだ。現在存在する他の大陸はすべて10億年以上前の古い岩石を含んでいるが、ジーランディアからのみこれまで検出されてこなかった。

ターンブル博士はGNS社のプレスリリースのなかで、「今回の新しい研究により、大陸のチェックリストすべてに印が入りました。私たち(ニュージーランドの人々)が大陸の上で暮らしているということに、もはや疑念はありません」と語っている。

今回の研究成果はまた、ゴンドワナよりもさらに古く約11億年前に形成されたとされる、ロディニア超大陸の変化を解き明かす手がかりにもなるという。地下室で砂粒をより分けた地道な研究が、壮大な地球の過去に光を投げかけることになりそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中