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【モデルナCEO独占取材】mRNAワクチンはコロナだけでなく医療の在り方を変える

CHANGING MEDICINE FOREVER

2021年8月5日(木)18時18分
デブ・プラガド(ニューズウィーク社CEO)

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モデルナのバンセルCEOはベンチャーらしいスピード感でワクチン開発を先導する Scott EisenーBloomberg/Getty Images

そして誤っていたことを証明するためには、何が必要なのかを見つけ出さなければならない。そうすることで、科学についての見方、やろうとしていることについての考え方を変えることができる。私たちには極めて質の高い科学が必要だった。そしてもう1つ、私たちは長期的な視点に徹底してこだわった。

――今の説明は「プラットフォーム企業」としてのモデルナにもよく当てはまると思う。貴社のプラットフォーム研究担当責任者メリッサ・ムーアは、モデルナを多くのアプリ(ワクチンや治療薬)が動作可能なiPhoneに例えた。(mRNAを利用した)モデルナのプラットフォーム上で何種類のワクチンや治療薬を開発できるのか。

どのような時間軸で考えるかによる。私たちの創薬手法によって、数種類のワクチン開発がとてもうまく進んでいることが最近6~9カ月で分かってきた。

私たちはこのようなワクチンを何千種類も作れると考えている。利用する技術は全く同じ。メッセージに書かれた生命の4文字(DNAの塩基配列)を、ソフトウエアの0と1のように変えるだけだ。

このやり方で別の種類のワクチンも作っている。現在開発中のワクチンは9種類。まだ臨床段階に達していない研究室レベルのワクチンも多くあり、間もなく発表の予定だ。私たちはワクチン・ビジネス全体を完全につくり替えることになると思う。

治療薬の分野では、肝臓に入って肝臓の希少な遺伝性疾患を治療する薬から、癌や心臓病の薬まで、5種類を開発中だ。私たちは米バーテックス・ファーマシューティカルズ社と共同で、mRNAを口から肺に入れる研究にも取り組んでいる。

数週間前には、mRNAを静脈から体内の幹細胞に送り込む新しい薬物送達システムを開発したと発表した。臓器再生や自己免疫疾患の治療などに画期的な進展をもたらす可能性があり、大いに期待している。

個人的には今後10~20年以内に5~15種類の「新薬ファミリー」が登場する可能性は高いと考えている。各ファミリー内には10~40種類の新薬が含まれる可能性がある。つまり、これは非常に幅の広いプラットフォームであり、今後10~30年で医療の在り方を一変させると思う。

COVID-19ワクチンが注目されたおかげで、これまではワクチンの話をする機会が多かったが、私が現在強い関心を持っているのはVEGF‒Aという治療薬だ。これはDNA内のタンパク質にちなんで命名された薬で、心臓発作を起こした直後の心臓に投与する。

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