最新記事

ネコ

330匹の猫が不審死...原因はペットフードか 重症猫は犬から輸血も 英

2021年8月30日(月)17時15分
青葉やまと

イギリスでペットの猫たちの衰弱と不審な死が相次いで報告されている kaorinne-iStock

<今年5月ごろからイギリス各地で猫たちの衰弱と不審な死が相次いで報告が目立ちはじめ、症例は報告された数だけで520例を数えるようになった。原因として疑われているのがキャットフードだ>

イギリスで5月以降、ペットとして飼われている猫たちの衰弱と不審な死が相次いで報告され、共通して特定のペットフードを食べていたことがわかった。

症状を発症した猫の多くは、「猫汎血球減少症」と診断されている。ウイルス性の感染症であり、感染すると数日の潜伏期間を経て赤血球・白血球・血小板の数が急速に減少する。初期の症状としては食欲不振や発熱などであるため、一般的な風邪と区別しづらい。重症化するにつれて目と鼻を含む体の各部からの出血や、嘔吐・下痢など消化関連の異状がみられるようになり、最悪のケースでは死に至る。

今年5月ごろからイギリス各地で報告が目立ちはじめ、症例は報告された数だけで520例を数えるようになった。獣医から報告が挙がっていないケースが大半を占めるとみられ、実際の数はこれを大幅に上回る可能性がある。報告された例のなかでは、感染した猫の6割以上が命を落としている。

原因として疑われているのがキャットフードだ。感染した猫のいる家庭から回収したキャットフードのサンプルを英食品基準庁(FSA)が分析したところ、カビが生成する毒素のマイコトキシンが検出された。

ただし、マイコトキシンが飼料や食品などから検出される事例はたびたび発生しており、ペットフードから検出されたことをもって直ちに猫汎血球減少症の原因であると断定することはできない。FSAは他の規制当局と連携して調査を続ける方針だ。

フェイスブック・グループが手がかりを発見

イギリス各地で体調を崩す猫が続出するなか、当初その原因は謎に包まれていた。究明に大きく貢献したのが、SNSを通じたオーナーたちの連携だ。

南西部ウェールズ地方に住むある女性は5月下旬、愛猫の感染を知った。その原因を突き止めたいという思いに駆られた彼女はフェイスブック上でグループを立ち上げ、猫汎血球減少症と診断を受けた猫の飼い主たちに情報提供を呼びかけた。

すると、すぐに共通の特徴が浮かび上がった。どの家庭でも、特定のペットフード・メーカー3社が販売する低アレルギー性のキャットフードを与えていたのだ。さらに調査を進めると、いずれの製品にも同じ製造コードが記載されており、ある1社の製造工場で生産されていることが判明した。

女性がロンドンの王立獣医科大学に内容を報告すると、早くも翌6月15日にはFSAが製品の回収措置を講じた。ペットフード3社による計21製品を対象とした、大規模なリコールだ。

迅速な対応の一方で、ペットフードの購入者に正しくリコール情報が伝わらないという不手際も明るみに出ている。英ガーディアン紙は、リコール対象となった販売者の1社が技術的エラーにより、広告メールを拒否している登録ユーザーにリコール情報を送信していなかったと報じている。重要な情報であるため、本来は広告受信の可否にかかわらず送信対象とすべきであった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏貿易黒字、2月は前月の2倍に拡大 輸出が回

ビジネス

UBS、主要2部門の四半期純金利収入見通し引き上げ

ビジネス

英賃金上昇率の鈍化続く、12─2月は前年比6.0%

ビジネス

日産、EV生産にギガキャスト27年度導入 銅不要モ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 5

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 6

    キャサリン妃は最高のお手本...すでに「完璧なカーテ…

  • 7

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 8

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 9

    中国の「過剰生産」よりも「貯蓄志向」のほうが問題.…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 7

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 8

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 9

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中