最新記事

米軍

米軍のアフガン撤退は中国との競争に集中するため? 判断は本当に正しいか

Biden’s Plan Doesn’t Add Up

2021年7月22日(木)17時57分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)
アフガニスタン国陸軍215軍団の兵士

アフガニスタン国陸軍215軍団の兵士 US MARINES-REUTERS

<「米軍は撤収するがタリバン復活はない」というバイデンの主張が、どうにも信頼できない理由>

約20年にわたりアフガニスタンで続いてきた戦争(アメリカ史上最長の戦争だ)が、予想以上に突然かつ急速に終焉を迎えようとしている。

4月にアフガニスタン駐留米軍の撤収を宣言したジョー・バイデン米大統領は7月8日、予定よりも早い8月31日までの撤収完了を発表した。だが、この決定に賛成であれ反対であれ、誰もが懸念すべき問題がいくつかある。

第1に、長年にわたり通訳として米軍に協力してきた多くのアフガニスタン人はどうなるのか。もし、反政府勢力タリバンが再び権力を握れば、彼らはほぼ確実に捕らわれるか、殺されるだろう。

米国防総省は、通訳たちを出国させる計画を策定中だというが、どのくらいの範囲(通訳としての協力期間や家族など)になるかは不透明だ。しかも、タリバンは首都カブールにつながる陸路の多くを支配下に置いているし、空路の頼みであるバグラム空軍基地は、既に米軍が撤収してしまっている。

第2に、アメリカは今後、アフガニスタンをどうやって守っていくつもりなのか。バイデンは4月、アメリカは今後もアフガニスタンをテロリストの支配から守ると約束した。だが、駐留米軍がいなくなったら、その約束をどうやって守るというのか。

バイデンは、「テロリストの再台頭を、地平線の向こうから阻止する」と語った。つまり、センサーや衛星を駆使して、遠くからでもタリバンをはじめとするテロ組織を監視し、必要であれば、近隣の米軍基地から戦闘機やミサイルや無人機(ドローン)を送り込むというのだ。

米軍撤収を決めた本当の理由

だが、アフガニスタンに最も近い「近隣の」基地は、1700キロ以上離れたカタールやアラブ首長国連邦にある。このため、「地平線の向こうから」アフガニスタンを防衛する戦略は、あまり有効ではないし、非常に高くつく。

例えば、こうした基地に配備する戦闘機や空中給油機、ジェット燃料、ミサイル、そしてドローンを増やさなくてはならない。パイロットや整備士や情報スペシャリストなどの人員も必要だろう。この地域にもう1隻空母を配備する必要もあるかもしれない。

こうした態勢を整えるために必要な投資は、バイデンのアフガニスタン撤収計画の最も不可解な部分だ。そもそも駐留米軍を撤収させる本当の理由は、アメリカの安全保障で、アフガニスタンの優先順位が大きく下がったからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・ウクライナ首脳会談、和平へ「かなり進展」 ドン

ビジネス

アングル:無人タクシー「災害時どうなる」、カリフォ

ワールド

中国軍、台湾周辺で「正義の使命」演習開始 実弾射撃

ビジネス

中国製リチウム電池需要、来年初めに失速へ 乗用車協
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中