最新記事

デルタ株でコロナ感染リバウンドでも規制全面解除 英首相ジョンソンの「賭け」

2021年7月11日(日)15時55分
英国旗とコロナウイルスのイメージ

ジョンソン英首相は、ロンドンを含めたイングランド地域で新型コロナウイルス感染対策として実施しているロックダウン(都市封鎖)を19日に全面解除し、経済活動を再開させる方針だ。写真は英国旗とコロナウイルスのイメージ。2020年3月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

ジョンソン英首相は、ロンドンを含めたイングランド地域で新型コロナウイルス感染対策として実施しているロックダウン(都市封鎖)を19日に全面解除し、経済活動を再開させる方針だ。しかし、実行に移せば、これまで首相が従っていた助言を提供してきた科学者の一部から、不安視する声が出てくるのは間違いない。

英国は世界で最もワクチン接種が進んでいる国の1つだが、新たな感染拡大にも直面している。そこでジョンソン氏は、人々の活動を止める代わりにウイルスとの共生を目指すという「賭け」に出た。これは、感染力の強いインド由来の変異株(デルタ株)からワクチンが人々をどれぐらい守れるかを探る世界初の試みでもある。

ジョンソン氏は、デルタ株の急速な浸透で何千人も死者が増える恐れがあると警告した後、行動規制をほぼ全て撤廃するいわゆる「自由の日」を既に4週間先送りし、ワクチン接種率を高める努力をしてきた。そして、足元では成人人口の86%超が1回目の接種を終え、2回とも完了した割合も3分の2近くに達したため、19日を行動制限の最終日に定めたのだ。

ただ、インペリアル・カレッジ・ロンドンの伝染病学者アン・コリ氏は、ロイターに対し、英国が増加を続ける感染者とともに日常を過ごせると宣言するのは早過ぎると警告。規制解除を再び遅らせるのが有益だろうとの見方を示した。コリ氏がかかわっている統計モデルは、ジョンソン氏が「自由の日」をいったん延期する決定を下した際の判断要素の1つになった。

コリ氏は「規制解除延期は時間稼ぎになると思う。われわれにはウイルスの感染力を低下させる介入手段がある」と述べ、追加接種やまだ、英政府が実施を決めていない子どもへの接種などに言及している。

また、100人余りの科学者は医学雑誌・ランセットへの寄稿で、ジョンソン氏の行動規制全面解除方針を「危険で時期尚早」と批判し、高水準の感染者数を容認するのは「反倫理的かつ非合理的」と訴えた。

これに対してジョンソン政権側は、考慮に入れるべき要素は単に伝染病学の視点だけにとどまらないと反論するとともに、新型コロナウイルスで死者が増えても、それを甘受する姿勢だ。

ジャビド保健相は、新型コロナ以外の医学や教育、経済上の問題がパンデミックを通じて蓄積されており、感染者数が1日当たり10万人に達したとしても、社会を正常に戻す必要があると述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:欧州の古い発電所、データセンター転換に活

ワールド

豪もパレスチナ国家承認へ、9月国連総会で イスラエ

ビジネス

エヌビディア「H20」は安全保障上の懸念=中国国営

ワールド

韓国・ベトナム首脳が会談、経済協力深化を表明 貿易
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 2
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 3
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋肉は「光る電球」だった
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中…
  • 7
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 8
    60代、70代でも性欲は衰えない!高齢者の性行為が長…
  • 9
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 10
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中