最新記事
中国

東京五輪開催に反対する人は反日なのか?

2021年7月4日(日)16時26分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

田原総一朗氏との対談『日中と習近平国賓』という本を出版して猛反対したほどだ。

田原氏は対談で、田原氏ご自身が二階幹事長や当時の安倍首相に「習近平を国賓として招聘するよう、私が進言しました」と述べ、「中国とは仲良くすべき! 何が悪いんですか?」をくり返された。向かう私は「「習近平を国賓として招くべきではない! 」」として、習近平の国賓来日がなぜ日本に不利益をもたらすかを主張し続けた。

これがあるから現在の菅政権がG7とともに「対中包囲網」を形成しようとしても内実は非常に緩く、実際にやっている政治は「親中的」なので、中国に有利な状況をもたらしていると多くのコラムに書き続けている。

7月2日のコラム<中山服をトップのみが着るのは中国政治の基本:建党100周年大会の構成と習近平演説を解剖>においてさえ、末尾部分で「あまり効力の高くない対中包囲網だとすると、アメリカは結局、中国人民の党への忠誠心を増強させる結果を招くだけになる。一党支配体制強化につながるのだ。だから私は日頃から、バイデン政権の『実際には効力のない、表面上の対中包囲網』に対して警鐘を鳴らし続けているのである」と書いたほどだ。

こういった視点に基づく主張は首尾一貫しており、2020年2月20日のコラム<習近平国賓訪日への忖度が招いた日本の「水際失敗」>や2020年3月6日のコラム<今さら!水際、中国全土を対象――習近平国賓来日延期と抱き合わせ>あるいは3月9日のコラム<コロナ禍は人災>などを書いてきた。

安倍氏は体調を崩されて退任なさったので、もう責任追求はやめておこうと思っていたのだが、今般、このような発言をなさっているのを見ると、何も反省しておられないし、事態が分かっておられないというのを痛感して考えを述べた次第だ。

もっとも、私は同じように反対しているからと言って、野党とは全く考えを異にする者なので、政治利用はしないようにして頂きたい。

結論から言えば開催を反対している者の中には反日的な人もいるかもしれないが、開催に反対している人が「反日」とは限らないということである。しかも「反日」という表現も適切でなく、「反政府」ではないのだろうか。

自民党の今のやり方に反対したら「反日」だというのでは、まるで香港で「国安法」により多くの「反香港政府者」を逮捕させている習近平のようで、これは民主主義社会の考え方ではないということになる。

私たち日本人は、普通に日本人の命を守ろうと思う権利を持っている。

そのことだけは警告しておきたい。

(なお、本論とは外れるが、ウイグル問題に関して制裁できる根拠となるマグニツキー法を今国会で審議さえさせなかったのは、自民党の二階幹事長周辺や公明党という与党であることを付言しておく。これが親中でなくて、何であろう!これこそが「反日」ではないのか?)


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中