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東京五輪開催に反対する人は反日なのか?

2021年7月4日(日)16時26分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

このように医療資源が逼迫している中、五輪選手やその関係者のために多くの医者や看護師が動員され、そうでなくとも足りなくなっている日本の医療資源を奪っていく。

ワクチンに関しても日本では他国に比べて出足が遅かったために、今も行きわたっておらず、自治体などの接種体制は準備されてもワクチンがないために接種ができない状態が続いている。その数少ないワクチンを、五輪関係者には優先的に配分していくというのは、やはりある種の命の格差化で非人道的である。だから反対している。

これは反日とか親日といった政治的感情とは全く別の問題だ。

次に反対している理由は、政治的判断に属するかもしれないが、それは「反日とは真逆」の判断であり、「中国に有利になるので、日本の国益を優先すべきだ」という考えに基づく。

なぜなら中国が東京五輪開催を支援する裏を知っているからだ。

そのため、たとえば5月28日にはコラム<バッハとテドロスは習近平と同じ船に:漕ぎ手は「玉砕」日本>を書き、また5月26日にはコラム<バッハ会長らの日本侮辱発言の裏に習近平との緊密さ>などを書いて、コロナ禍における東京五輪開催に反対してきた。

もし東京大会が開催されないことになれば、それはコロナのせい以外の何ものでもないので、当然のこととして、最初に武漢のコロナ感染の外流を防げなかった習近平に責任追及の矛先がいく。

その理由に関しては2020年1月31日のコラム<習近平とWHO事務局長の「仲」が人類に危機をもたらす>や2020年1月24日のコラム<新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?>で書いた事実があるからだ。

もし日本が東京五輪を開催すれば、習近平は非難を免れ、おまけに北京冬季五輪のボイコットを日本が叫べなくなるので、習近平としては何としても東京五輪を開催してほしいのである。

そういう視点からも、コロナ禍における東京五輪の開催には反対している。

毎日新聞などの報道

一方、毎日新聞などは安倍氏の「反日的な人が五輪開催に強く反対」という所だけを切り取って報道している

見出しを書くときにはどうしても短く一部分だけを切り取らざるを得ないのは(私自身も最も苦労するところなので)十分に理解できるが、その見出しが誤解を招き、逆に政治利用されているような側面も否めない。よく読めば、毎日新聞の本文ではきちんと「具体的には共産党や5月の社説で中止を求めた朝日新聞を挙げた」と書いてはある。

多くの週刊誌も安倍発言をさまざまな角度から非難しており、その際、毎日新聞同様、「一部を切り取っている側面」は、否定はしない。しかし、これだけ多くの人たちが毎日新聞や多くの週刊誌の主張に賛同の意を表すのは、安倍氏自身に問題があるからではないだろうか。

安倍氏こそ親中により日本国民の利益を損ねている

私はもともと安倍首相の支援者だった。どちらかと言うと心から支援していた。

しかし2018年以降、自分を国賓として中国に招聘してもらうために二階幹事長に親書を持たせて習近平に会わせ、一帯一路協力を交換条件として国賓としての訪中を成し遂げたあたりから支援できなくなっていた。特にその見返りに習近平を国賓として日本に招聘するという約束を習近平と交わしてからは、「絶対に反対である」という考え方を揺ぎないものとして貫いてきた。

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