最新記事

インタビュー

米欧にも中露にも取り込まれない...ポーランド首相、独占インタビュー

POLAND AT CENTER STAGE

2021年7月30日(金)17時52分
ジョシュ・ハマー、マシュー・ティアマンド
ポーランドのモラウィエツキ首相

中間の国 独自の立場から発信するポーランドのモラウィエツキ首相 PIOTR MALECKI-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

<東西のはざまで翻弄される中欧米。バイデン政権やデジタル課税についてモラウィエツキ首相が語ったポーランド独自の視点とは>

西にはドイツを中核として西欧的価値観を共有するEU圏、東にはウラジーミル・プーチンの陣取る絶対主義的なロシア圏。その中間に位置する諸国はずっと両陣営の綱引きに翻弄されてきたが、中でも民族主義色を鮮明に打ち出しているのがポーランドだ。

右派政党「法と正義」が政権を握り、2017年12月からはマテウシュ・モラウィエツキが首相を務める。西側の右派勢力には受けがいいが、リベラル派からは批判されがちな男だ。そんなモラウィエツキが5月27日、本誌ジョシュ・ハマーとポーランド系米国人ジャーナリストのマシュー・ティアマンドの単独インタビューに応じた。首相が米メディアの突っ込んだ取材に英語で応じたのは初めてだ。以下はその要約である。

――イギリスのEU離脱から半年たつが、EU内部には亀裂が残っている。EU本部の官僚主義には根強い反発があり、イタリアやスペインでは反EU派が勢いを増している。この先、もっと調和を重んじつつ統合を進めることは可能だろうか。それとも今の不安定な政治状況が今後も続くのだろうか。

ヨーロッパを1つの超大国にしたい、いわゆる「ヨーロッパ合衆国」をつくりたいと考える人もいるようだが、それはあり得ない。どのEU加盟国にも、それぞれのアイデンティティーや文化、言語や伝統があり、独自の気質があるからだ。

しかし同盟の強化は可能だ。「みんなの故郷ヨーロッパ」を目指せばいい。一部の大国がEUの超大国化を強引に進めても、加盟国間の摩擦や緊張が高まるだけで、1つの超大国にはなれない。

ただし域外の世界、グローバルな力を持つ大国に対して、とりわけ私たちの発展を邪魔しそうな東の大国に対しては共通の戦略を策定するべきだ。もちろん大西洋の両岸の同盟関係を維持しなければならない。そうすれば超大国になれる。ただし一部のEU官僚が信じているような画一的超大国ではない。

一方で私は、中国やロシア、イスラム圏といった外部の危険要素に対するEUの共通戦略は支持する。この点でも、当然ながらアメリカとの力強い連携が必要だ。

――中欧と東欧の12カ国による地域協力の枠組みである「三海洋イニシアチブ」が、いずれは西欧中心の枠組みへの政治的・経済的な対抗勢力になり得ると思うか? また、プーチン率いるロシアが東から分断圧力をかけてくるなか、三海洋イニシアチブの加盟国間の関係は維持できるのか?

私自身は、三海洋イニシアチブがEUの団結や強さに対抗する勢力だとは考えていない。むしろ逆だ。(先々代のローマ教皇)故ヨハネ・パウロ2世の言葉を借りれば、三海洋イニシアチブの諸国は今もヨーロッパの「機能していない、もう1つの肺」だ。西側の肺に比べて、東側の肺はまだまだ成長が遅れている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン

ワールド

トランプ氏、チェイニー元副大統領の追悼式に招待され

ビジネス

クックFRB理事、資産価格急落リスクを指摘 連鎖悪

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、インフレ高止まりに注視 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中