最新記事

朝鮮半島

焦りの文在寅、諦めの金正恩、文が汚名を回避するリミットは3月

KOREAN AFFAIRS

2021年7月9日(金)17時10分
浅川新介(ジャーナリスト)
文在寅と金正恩

ILLUSTRATION BY KYOJI ISHIKAWA FOR NEWSWEEK JAPAN

<何の成果も出せず、支持率が下がり始めた文在寅政権。2022年3月の韓国大統領選を前に、北朝鮮問題が動き出すかもしれない>

朝鮮半島情勢は2021年末に向けて騒がしくなりそうだ。まず、2022年3月に韓国で大統領選がある。選挙戦は既に始まっている。

文在寅(ムン・ジェイン)政権の支持が振るわない。2017年の就任以来、彼が誇っていた支持率40%の「コンクリート支持層」は崩れ始めた。

昨年の今頃は「あと10年は革新政権が続く」と豪語していた与党「共に民主党」も危機感を募らせている。

コンクリート支持層が崩れたのは、なによりも内政──不正腐敗の問題と、肌で感じる経済回復がないためだ。これにコロナ禍も加わった。

特に住宅問題で高位高官が投機的な土地を買いあさっていたことが発覚。住宅価格の急騰で、文大統領誕生を強く後押しした結婚適齢期の若者や庶民層には住宅購入が夢のまた夢になっている。

韓国人にとって住宅の持つ重みは日本とは違う。住処(すみか)でもあり投資の対象でもあるので、持てる者に対する反感はかなり強い。

一方、今年6月には保守系最大野党「国民の力」代表に36歳の李俊錫(イ・ジュンソク)が選ばれた。秀才とされながら議員経験がない彼が他のベテラン議員候補を制して当選したのは、若者の支持と、既存体制の打破を国民が望んでいることの表れとも言える。

4月の首都ソウルと釜山の市長選では共に「国民の力」候補が圧勝したが、これも同じ理由だろう。

発足当時から高い支持率を誇ってきた文政権だが、これまでの4年間で目に見える成果がない。経済回復と若者の雇用増大を掲げたものの、それもうまくいっていない。

同時に注力した北朝鮮との関係改善も低調のままだ。ラブコールを送った結果、2018年に史上3度目の南北首脳会談を果たし、これは史上初の米朝首脳会談へとつながったが、北朝鮮が変わった兆しはない。

経済制裁の緩和・撤回と核開発維持の両方を北朝鮮が狙っていたためだが、制裁は維持され、首脳会談をしても「何も変わらない」と北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は分かったのだろう。

経済交流や支援などが南北首脳会談で決められたが、現在は何をやろうにも国連の経済制裁に抵触してしまう。文政権の中には「南北だけでやれるものはやってしまおう」という声もあったが、米国がそれを許さない。

北朝鮮からすれば、「トップが取り決めた約束を韓国は全く守っていない」ことになる。文に対する不信感は相当に根強い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

宇宙船オリオン、4人乗せ地球に無事帰還 月の裏側を

ワールド

アングル:イラン戦争でインフレ再燃、トランプ政権に

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、中東停戦維持期待で安全資産

ワールド

イラン交渉団がパキスタン到着、レバノン停戦要求 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 8
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 9
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 10
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中