最新記事

香港メディア

「リンゴ日報の次」と言われる民主派メディア、弾圧を見越して「身辺整理」

Hong Kong's Stand News Removes Op-Eds After Pro-Democracy Apple Daily Folds Under Pressure

2021年6月28日(月)16時42分
レベッカ・クラッパー
蘋果日報の最後の朝刊に殺到した香港市民

24日、蘋果日報の最後の朝刊に殺到した香港市民  Lam Yik-REUTERS

<追い込まれた「立場新聞」は、読者や社外筆者からの投稿公開を一時停止、購読サービスも停止した>

香港の民主派寄りのネットメディア「立場新聞」が27日、声明を出し、過去の社外筆者からの寄稿や読者からの投稿をサイトから一時的に削除するとともに、有料会員サービスを停止すると発表した。香港が言論弾圧にさらされていることを受け、自社が手がけたニュース記事のみを掲載していくという。

香港では、民主派寄りの日刊紙、蘋果(リンゴ)日報(アップル・デイリー)が当局から資産を凍結されて廃刊に追い込まれたばかり。中国政府は民主化を求める香港の市民感情を国家安全保障への脅威と捉えており、弾圧の対象としている。蘋果日報への締めつけもその一環だった。

立場新聞が当局によって閉鎖される可能性が確認されたわけではないが、幹部の1人である陳朗昇(ロンソン・チャン)によれば、香港市民は蘋果日報の廃刊によって報道の自由が大きな打撃を受けたと受け止めており、懸念を強めているという。

「香港市民の半分は、次の標的は立場新聞だと言っている」と、陳はアメリカ政府の海外向け放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に語った。

「立場新聞が捜索されるとかスタッフが逮捕されるなどのはっきりとしたメッセージを受け取ったわけではない。法律や警察の動きに関する私自身の理解からは、われわれのニュース報道に問題があるとは思えない」

支援者や書き手のリスクを減らす

立場新聞によれば、有料会員からの購読料の徴収や寄付の受け入れを停止するのは、ウェブサイトの閉鎖を余儀なくされた場合に支援者の金が無駄になるのを防ぐためだ。それでも9〜12カ月、ニュースサイトの運営を続けるだけの資金はあるという。

立場新聞は声明で、「支援者や書き手、編集者を守り、関係者全てのリスクを減らすため」の5つの方針を発表した。

蘋果日報のコラムニスト、ジャック・ヘイズルウッドはツイッターで、寄稿や投稿の削除を決めた立場新聞の声明にリンクを張ってこう述べた。

「外国のメディアからはほとんど注目されないだろうが、香港の報道の自由にとって暗黒の瞬間だ」

立場新聞はまた、雇用期間が半年を超える従業員との雇用契約を5月にいったん打ち切ったと明らかにした。法で定められた額よりも多く退職金を支払う一方で、再雇用の選択肢も用意した。従業員の大多数は残留して働き続けることを選んだという。

これは従業員を守るための決断だった。ちなみに蘋果日報では、17日に本社が警察の強制捜査を受けた際、発行元のCEOを初めとする幹部5人が逮捕された。CEOと編集長は保釈を認められていない。

立場新聞の幹部6人は退職勧告を受け入れたが、創立時からいる2人の幹部は残ることを決めたという。

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国大統領、1月4ー7日に訪中 習主席とサプライチ

ビジネス

米シティ、ロシア部門売却を取締役会が承認 損失12

ワールド

マレーシア野党連合、ヤシン元首相がトップ辞任へ

ビジネス

東京株式市場・大引け=続落、5万円台維持 年末株価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中