最新記事

米ロ会談

成果は乏しくとも「大成功」だった米ロ会談

What Biden and Putin Really Did

2021年6月21日(月)12時35分
フレッド・カプラン
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とジョー・バイデン米大統領

6月16日の首脳会談後、それぞれ単独記者会見を行ったプーチンとバイデン LEFT: Alexander Zemlianichenko-Pool-REUTERS, RIGHT: Peter Klaunzer-Pool-REUTERS

<2国間関係が最悪状態に冷え込むなか、初めて会ったバイデンとプーチン。成果といえば「協議を始める」ばかりだが、それでも進展があったと言える理由とは>

成果は少なかった。米新政権の発足後、初めて対面で行われた米ロ首脳会談だったのだが......。

とはいえ「わずか」は「ゼロ」よりましだ。米ロ関係の現状を考えれば、それ以上は期待しようがないだろう。

今回の会談の結果、米ロは「戦略的安定」やサイバーセキュリティーをめぐる公式協議を近く開始することになった。対立悪化により、この春から一時帰国している両国大使がそれぞれ任地に復帰することも決まった。さらに、対シリア人道支援やアフガニスタン和平、イラン核問題に関する協議も行われる予定だ。

成果といえば、ほぼそれだけ。両首脳とも、それで当然と考えている様子だった。

「過剰な前宣伝だらけだったが、非常に率直な会談だった」。ジョー・バイデン米大統領は首脳会談後の記者会見(ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による単独記者会見の後、これまた単独で行われた)でそう語った。

6月16日にスイス・ジュネーブで開催された米ロ首脳会談はバイデンにとって、G7首脳会議、NATO首脳会議、EUとの首脳会談に臨んだ1週間の欧州歴訪を締めくくるもの。途中の休憩を除いて約2時間半で終了したが、これは当局者が事前に語った見通しの半分ほどの時間だ。

今後の1年が試金石に

ただし、バイデンとプーチンの双方が会談後に指摘したように、国際問題について真剣かつ詳細に話し合う首脳間対話が、これほどの長さに及ぶことはめったにない。

最初の約1時間半、両大統領はアントニー・ブリンケン米国務長官とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相、通訳だけを交えて会談。その後は、ロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長を含む顧問数人が加わった。アメリカ側は、国務省と国家安全保障会議(NSC)の高官が同席したものの、国防総省からの参加者はなかった。

もっとも、2者会談で広範囲を網羅したため、規模を拡大した会談の場で話し合うことはほとんどなかったと、バイデンは説明している。

そうかもしれない。だが、別の事実も浮かび上がる。どちらも、両国が協力可能な問題と、相違点が対立として噴き出す事態を避けるべき問題について突っ込んで話し合う準備、または意思がなかったということだ。

それでも、話し合いをしただけでも大したことだ。首脳会談以前、米ロ関係は最悪状態で、危機回避や通常の外交のための場がほぼ皆無だった。だが、もはやそうではない。

「アメリカの利益や価値観に関して何一つ譲ることなく、大幅に関係を改善する真の可能性が存在する」と、バイデンは述べた。とはいえ先行きを楽観視はしていない。「意義ある戦略的対話が実現するかは、今後半年から1年の間に判明するだろう」

それこそが、今回の首脳会談が重要な出来事だったか些事にすぎなかったかを見極める「テスト」になると、バイデンは語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪6月就業者数は小幅増、予想大幅に下回る 失業率3

ワールド

WTO、意思決定容易化で停滞打破へ 改革模索

ビジネス

オープンAI、グーグルをクラウドパートナーに追加 

ワールド

トランプ政権、加州高速鉄道計画への資金支援撤回 「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 5
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 6
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 7
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 9
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 10
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中