ビットコイン相場で話題の「マイニング(採掘)」って何?

2021年6月3日(木)17時10分
高山武士(ニッセイ基礎研究所)

そうすると、ブロック#2のヘッダ部分は「634505251???」という数値になる。

ここで、最後の「???」に相当する「ナンス」については説明していなかったが、マイニングでは実はこの数値が重要である。「ナンス」の数値は外部から与えられるものではなく、「ナンス」はネットワーク参加者(採掘者)が探しあてる数値である(図表5で「ナンス」を黄色にしているのは金発掘のイメージのため)。

では、採掘者はどのような「ナンス」(「???」の数値)を探しているのだろうか。それは、ブロックヘッダからハッシュ値を計算したときに、そのハッシュ値が閾値(target)を下回るような「ナンス」である。この閾値を下回るとブロックが作成される(そこに含まれる取引が承認される)。

これを具体例で示してみたい。ここでは閾値としてハッシュ値(この例では「☆値」)が10未満となるような「ナンス」を探している状況を想像してみる。

採掘者がナンスとして「001」を選んでブロックヘッダの「☆値」を計算してみたとする。この場合、「ブロック#2のヘッダ」=「634505251001」(下3桁がナンスで今回は「001」)となり、この☆値は25である10。☆値が10以上であるためブロックは作成できない。

-----
10 6+3+4+5+0+5+2+5+1+0+0+1=32で、634505251001÷32=19828289093あまり25


次にナンスとして「045」を選んでみる。この場合、「ブロック#2のヘッダ」=「634505251045」であり、☆値は5となる11。☆値が10未満であるためブロックが作成できる。

-----
11 6+3+4+5+0+5+2+5+1+0+4+5=40で、634505251001÷40=15862631276あまり5


したがって、「ブロック#2」は「ヘッダ部分」が「634505251045」、これに「取引リスト」が加わったものとして作成できる(前掲図表5)。これ以外の「ナンス」でも☆値が閾値以下になるような「ナンス」であればブロックは作成できるが、どの"当たり"の「ナンス」がブロックとして採用されるかは早いもの勝ちである(1番早く見つけられた"当たり"の「ナンス」でブロックが作成される)。

また、「ブロック#2」のヘッダである「634505251045」の☆値となった「5」は「ブロック#3」のヘッダの先頭部分の数字12となる(「ブロック#2」ヘッダの先頭部分が「ブロック#1」のヘッダのハッシュ値であったことと同じ)。

-----
12 実際にはソフトウェアのバージョン情報がさらに先頭につく(脚注8と同様)。


このように前ブロックのヘッダ部分のハッシュ値が次ブロックに組み込まれていることから、ブロックがチェーン状に繋がっているイメージが持てる。そのため、このブロックの連なりがブロックチェーンと呼ばれる。そして、前のブロックが作成されてはじめて次のブロックのヘッダに格納すべき数値が分かる。そのためブロックは1列にしかつながらず、いわばブロックのハッシュ値はその前までに繋がっているブロックすべての情報が集約されているのであり、これがチェーンの役割を果たしていると言える。

このブロック作成で重要なのは、もちろん「ナンス探し」であるが、これは"あてずっぽう"で探すしかない(今回の例で「☆値」をやや込み入った計算にしたのは、"あてずっぽう"でしか探せなさそうな雰囲気を出すためでもある)。

また、先ほど述べたように"当たり"の「ナンス」探しは早いもの勝ちである。早くナンスを探せた参加者(ノード)はブロックを作成し、その報酬として新しいコインを得ることができる13。それ以外の参加者(ノード)には報酬はなく、次のブロックでナンス探しをしなければならない。

-----
13 取引リストに含まれている取引の手数料も得ることができる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

BMW、業績見通し据え置き 下期に一部自動車関税下

ワールド

中ロが戦後の国際秩序を維持、習主席が寄稿 7日から

ビジネス

川崎船、今期最終67%減の1000億円予想

ビジネス

午後3時のドルは143円前半へ上昇、米中対立緩和に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗と思え...できる管理職は何と言われる?
  • 4
    分かり合えなかったあの兄を、一刻も早く持ち運べる…
  • 5
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 6
    「欧州のリーダー」として再浮上? イギリスが存在感…
  • 7
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 8
    首都は3日で陥落できるはずが...「プーチンの大誤算…
  • 9
    「関税帝」トランプが仕掛けた関税戦争の勝者は中国…
  • 10
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中