最新記事

インド

SNSで売られるインドのコロナ孤児たち 児童売買・性的虐待が流行か

2021年5月26日(水)18時00分
青葉やまと

コロナ孤児が新たな家族を見つけることは非常に難しい

孤児の取引が絶えないのは、引き取り手が見つかりにくいことから、彼らが非常に弱い立場に置かれているためだ。豪放送局のSBSは、インド北部の郊外で孤児となった男児の事例を紹介している。この男の子はまだ幼児にもかかわらず、両親がコロナウイルスで死亡した後、誰も世話する人がおらず一人だけで辛うじて生き延びていたという。

近隣の人々は泣き声を聞くことがあったというが、現場はコロナを患っていた両親の生活スペースであり、さらに男児も無感染だと確認されたわけではない。どうにか助けてやりたいと思いつつも、自分たちが感染してしまうリスクを考えると行動に移すことは難しかった、と住民は振り返る。

男児の場合は幸いにも住民が支援機関に通報し、医療的な保護を受けたうえで児童保護団体に引き取られた。しかし、社会的距離の保持が求められているいま、孤児となったことにすら気づかれないまま衰弱してゆく幼児も増えている。

比較的幸運な場合は地域の人によって発見され、親戚と連絡がつくケースもあるが、このような場合でも引き取りに結びつくとは限らない。とくに遠縁の親戚の場合、養っていくことが経済的に難しいなどの理由から、養子縁組に難色を示されることが多いのが実情だ。

経済悪化で売りに出され、一部は性的に虐待されている

現在インドを襲っているコロナ第2波以前にも、人身売買の増加は危惧されていた。米CNNは昨年の時点で、児童取引の増加はパンデミックによる「第2の危機」だと述べている。インド全土では昨年9月までの半年間で86名が人身売買の疑いで逮捕され、1000名以上の子供たちが救出されたという。

インドでは昨年3月下旬から全土対象の大規模なロックダウンが実施され、これに伴い職場と学校も閉鎖された。親たちは十分な収入を得ることが難しくなり、さらに子供の昼食をまかなっていた学校給食も中断となる。経済的に困窮し、やむを得ずわが子を売りに出したケースが増加した。

痛ましいことに、売買の対象となる子供の一部は性的搾取の被害者となっている。インディアン・エクスプレス紙は、東部・ゴッダの町で17歳の少女など未成年計4名がロックダウン期間中に身柄を売られ、売買業者の事務所に監禁されながら性的虐待を受けていたと報じている。

ほか、鉄道駅で保護された15歳の少女や、人身売買業者と引取先の雇用主の双方から性的に虐待された13歳の少女など、コロナ以降は児童搾取の深刻化に歯止めがかからない。ゴッダの町を含むジャールカンド州では過去約2年間に480人が救出されているが、件数として明らかになっているものは一部に過ぎないと見られる。

日々報じられる圧倒的な感染者数に目を奪われがちだが、水面下では無力な子供たちが見えない犠牲者となっている。

India fears increase of children trafficked or forced into labor | DW News

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ネクステラ、グーグルやメタと提携強化 電力需要増

ワールド

英仏独首脳、ゼレンスキー氏と会談 「重要局面」での

ビジネス

パラマウント、ワーナーに敵対的買収提案 1株当たり

ワールド

FRB議長人事、大統領には良い選択肢が複数ある=米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中