最新記事

イギリス

脱炭素「優等生」とされるイギリスの環境政策が、実は全く持続可能でない理由

NO CLIMATE LEADERSHIP

2021年4月30日(金)18時07分
ジェイミー・マクスウェル

「ジョンソンは相変わらず、レトリックと現実がかみ合っていない」と、英政策フォーラム「コモンウェルス」の理事で気候変動時代の世界経済を考察した共著もあるマシュー・ローレンスは言う。保守党が気候変動に本腰ならば「イギリス史上最大規模の道路計画ではなく、ご自慢の『グリーン産業革命』にもっと金をかけるはずだ」と、彼は言う。

こうした主張を裏付けるように、現政権は英北部のカンブリアでの新しい炭鉱開発を最近までやめようとしなかった。慌てて計画を中止したのは、CCCのジョン・ガマー会長が1月29日付の政府宛ての公開書簡で炭素ガス排出が増大すると批判してからだ。

COP26が近づいてくるなかで、ジョンソンは環境政策のリーダーとしてのイギリスの評判と、実際にはちぐはぐな政府の姿勢とのギャップが国際社会に気付かれないよう願っているはずだ。

英気候変動シンクタンク「E3G」のニック・メイビーCEOは、COP26がイギリス外交にとって「ブレグジット後で初の本格的な試金石」になり、そのため保守党政権にとって「極めて重要」なイベントとなると指摘する。

COP26が開かれる11月までの間、ジョンソンがソフトパワー戦略を仕掛ける相手は、気候変動を優先課題に掲げる米バイデン政権になると、メイビーは予測する。トランプ前米政権での混乱と問題山積のブレグジットによって米英の結び付きは揺らいでいるが、「イギリスは明らかに気候変動を両国関係の再構築に使おうとしている」と、メイビーは言う。

ブレグジットをめぐる地政学を脇に置いて言うならば、アメリカや国際社会に対するイギリスの「グリーン優等生」アピールが成功するには、今後10年の炭素排出削減に関する信頼できる計画が必要なことは明らかなように思える。

今のところ、そのような計画はない。これはイギリスにとって、深刻な事態を生みかねない。

From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本との関税協議「率直かつ建設的」、米財務省が声明

ワールド

アングル:留学生に広がる不安、ビザ取り消しに直面す

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単に作れる...カギを握る「2時間」の使い方
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 6
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 7
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中