最新記事

ミャンマー

【ミャンマールポ】現地報道もデモも、国軍の「さじ加減」で消されている

An Ominous Silence

2021年4月28日(水)11時30分
ニューズウィーク日本版編集部

magf210427_myanmar2.jpg

2月に一時拘束された際の北角氏 AP/AFLO

街へ出ると、今が平時であるかのような錯覚に陥ることがある。3月のような緊張感はある意味で薄れている。以前は自分が動く範囲のそこここで物々しいバリケードや、タイヤが燃えた痕が見られたが、そういった光景を見る機会は随分少なくなった。

3段階でネットを規制

これまでインターネットの制限は3段階で強化された。

最初の制限で深夜1時から朝9時までのネット遮断が行われた。これにより、夜間に起こった事件については次の日の朝まで情報を広めることができなくなった。

それから携帯のネット遮断。これによって固定回線を持たない大多数のミャンマー人のインターネットへのアクセスが遮断された。次にモバイルWi-Fiでのネット通信の遮断。この結果、人々は外で起こる一切をリアルタイムで発信するすべを失った。

そして、この間に国軍が運営する以外の全メディアの報道ライセンスは取り消された。今この国で正式なニュースというのは一部の決められた人間が出しているものだけだ。

今は街に妙な静けさがあり、一見すると平時のように見えてしまう。ただ、この感覚に陥るのは、以上のようなことが原因だと気付くと、背筋が凍る思いがする。

どんなに国軍が取り繕ったとしても、毎日犠牲者は増え続けている。そして人知れず市民は拘束され、全ての人がいつでも罰せられるルールが出来上がっている。

私の住んでいる地域から、毎晩8時に行われていた軍事政権への反意を示す鍋たたきはなくなった。耳を澄まして遠くの音を探しても全く聞こえない。広範囲で地区の代表や重鎮がやめるように働き掛け、徹底させているようだ。

今われわれに示されている「ルール」は、鍋をたたいた者は実弾で撃ってもいいというものだ。自分がたたけば別の誰かも撃たれる──人々が鍋をたたけなくなった理由だ。

誤解されがちだがデモに参加していた人々は、そもそも非武装・非暴力のデモで救われるという単純な発想で行動をしていたのではない。

外国の圧倒的な軍事力による介入で国軍の暴挙を止めてほしいと懇願し、それを可能にするために、市民として非武装・非暴力で反意を示していた。これが1つ目の試みだ。

2つ目は人道的介入が「内政不干渉」という、とある大国の思惑で制限されるため、これを超える「R2P(自国民を保護できない国家の国民を国際社会が保護する責任)」を強く打ち出したこと。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、ベネズエラ支援継続 「外部干渉受けず自らの

ワールド

再送ウ有志連合、安全の「保証」で拘束力ある約束も 

ワールド

中間選挙敗北なら「弾劾される」、トランプ氏が共和議

ワールド

イラン抗議活動で25人死亡、拡大の様相=人権団体
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 5
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 8
    砂漠化率77%...中国の「最新技術」はモンゴルの遊牧…
  • 9
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 10
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中