最新記事

副反応

米当局、J&Jコロナワクチン接種の一時中断を勧告 血栓の副反応で

2021年4月14日(水)09時19分

米保健当局は13日、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の新型コロナウイルスワクチンについて、接種者のうち6人がまれな血栓症を発症したことを受け、ワクチン使用の一時中止を勧告した(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

米疾病対策センター(CDC)と米食品医薬品局(FDA)は13日、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の新型コロナウイルスワクチンについて、接種した50歳以下の女性6人に血栓が生じる事例が報告されたことを受け、接種を一時中止するよう勧告した。

FDA高官によると、ワクチン接種の中断は少なくとも数日間で、医療従事者が状況に対応できるよう情報を提供することが目的という。

米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、J&Jワクチン接種停止が数日から数週間続く公算が大きいとした上で、全面的な使用打ち切りに至る可能性も排除できないと述べた。

FDAとCDCによると、血栓症を発症したのは18─48歳の女性6人で、接種後6─13日後、脳に血栓ができる静脈洞血栓症(CVST)を発症し、血小板の減少も見られた。6人のうち1人が死亡し、別の1人は重体という。

FDA高官は、英アストラゼネカ製ワクチンを巡り報告されている症例と「類似していることは明白」と述べた。

FDA、CDC両当局は、こうした事例が極めてまれとした上で、CDCの諮問委員会が14日に会合を開いて協議するほか、FDAも分析評価を行うと明らかにした。

米政府、ワクチン接種計画に変更なし

米ホワイトハウスは、代わりのワクチンを接種できるよう調整しているとし、J&J製ワクチンの接種中断はバイデン大統領が目指している4月末までに国内で2億回接種するという目標の達成に影響しないと説明した。

バイデン氏は記者団に「十分なワクチンを確保しており、それは100%確かなことだ」と強調した。

4月12日時点で、米国でのJ&Jワクチンの接種回数は680万回以上。

J&Jワクチンを巡っては、欧州でも接種後にまれな血栓症の発症が4例報告されており、当局が調査に乗り出している。

J&Jは、規制当局と緊密に協力しており、今回の事例とワクチンとの間に明確な因果関係は確認されていないと表明。報告されたまれな血栓症例を精査しているほか、欧州でのワクチン展開を遅らせるとした。

ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターの感染症専門家アメッシュ・アダルジャ医師は「血栓とワクチンに因果関係があったとしても、非常にリスクの低い事案だと考えられる。約700万回の接種で血栓の発症が6例というのは、経口避妊薬による血栓のリスクよりも低く、パニックに陥るほどのことではない」と述べた。

マサチューセッツ大学メモリアル・メディカルセンターのロバート・クルーグマン医師は「他のワクチンでは見られない異常かつ重篤な副反応の性質からして、当局の勧告は理にかなっている」という見方を示した。

欧州連合(EU)の高官はロイターに対し、J&JがEU向けワクチン供給遅延を発表したことは「全くの想定外」とし、欧州委員会は説明を求める意向と明らかにした。

高官によると、J&Jは先週末の会合で6月末までにEUに5500万回分のワクチンを供給することを確認したとし、「英アストラゼネカと同様の状況に陥る恐れがあり、懸念される」と述べた。

各国も対応急ぐ

南アフリカは、J&Jワクチンと血栓症の因果関係を巡り十分な精査が行われるまで、同ワクチンの接種を一時停止すると発表した。

カナダのトルドー首相は、血栓症が発症したという報告を巡り、J&Jと連絡を取っているとした。さらに、国内で急速に広がる新型コロナ変異株の感染に警鐘を鳴らした。また同国では、アストラゼネカ製ワクチン接種後に血小板減少を伴う血栓症事例が初めて報告された。

ベルギーはJ&Jワクチンの接種を継続すると表明。ワクチン対策本部の報道官は「現時点で接種を中断すべきシグナルは確認していない」とした。ベルギーは前日、3万6000回分のJ&Jワクチンの供給を受けたばかり。

スウェーデンはJ&Jワクチンの使用を巡り、数日中に決定すると表明した。スウェーデンは週内にJ&Jから初のワクチンを受け取ることになっていた。

スペイン保健相は、14日にJ&Jワクチン30万回分を受け取る計画が変更されるとは認識していないとした。

世界保健機関(WHO)はロイターへの電子メールで、 EUの医薬品規制当局である欧州医薬品庁(EMA)およびFDAの分析や、副反応に関する世界的なデータを注視するとし、「データの精査には幾分時間がかかる見通し」とした。

*内容を追加ました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・フィット感で人気の「ウレタンマスク」本当のヤバさ ウイルス専門家の徹底検証で新事実
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相、中国首相と会話の機会なし G20サミット

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中