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「口だけ立派」なメルケル時代の終焉で、ドイツに押し寄せる厳しい現実

GERMAN POLITICS BACK

2021年4月7日(水)17時03分
ヨシュカ・フィッシャー(元ドイツ外相)

自己満足状態が続いたドイツは今、当然ながら巨大な構造的課題に直面している。

ドイツ政府は、欧州委員会やEU加盟各国と並んで、欧州での新型コロナワクチン接種の遅れが招いた信頼喪失の克服に力を尽くさなければならない。今回のパンデミック(世界的大流行)の克服は、次期政権が取り組む優先課題であるべきだ。

同時に、パンデミックが加速させたデジタル化の流れを利用して、欧州は米中に追い付く必要がある。デジタル・イノベーションの成功は欧州の主権にとって決定的な力になり、ドイツ・欧州経済の競争力維持に役立つだろう。そのためには研究開発への大規模投資や教育制度改革が不可欠だ。

最大の課題は、労働者を保護し、社会の結束を保ちながらグリーン経済を実現すること。これはEUの枠組みを通じて、欧州全体で集合的に取り組むべき課題だ。

トランプがホワイトハウスを去り、欧州は良好な対米関係の重要性を認識している。だが欧米間の同盟を強化するために欧州は、安全保障・政治面の負担を増やし、中国の台頭がもたらす課題に関してもそれなりの役割を果たさなければならない。

どれもドイツにとって簡単なことではない。それでも、口だけ立派で行動が伴わなかったメルケル時代の終わりは明らかだ。ドイツの玄関先には現実が押し寄せている。次の指導者は扉を開けるだろうか。

©Project Syndicate

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