最新記事

宇宙

硬貨大のブラックホールが地球を破壊する

A Coin-Sized Black Hole Would Destroy Earth—Here's How

2021年4月6日(火)17時00分
エド・ブラウン
地球と月に接近するブラックホールのイメージ

地球と月に接近するブラックホールのイメージ buradaki-iStock.

<人気掲示板サイトに投稿されたブラックホール衝突のシミュレーション動画が大ヒット>

3月29日、ソーシャルニュースサイト、レディットに「1セント銅貨サイズのブラックホールが地球と接触したときに起きる現象」をシミュレーションしたという動画が投稿された。

その後、この動画は偽物で、ブラックホールとは何の関係もなく、破壊される地球をCGIで描いたストック映像であることが判明した。だがすでにこの投稿には5000以上のコメントがつき、6万以上の高評価が集まっていた。その映像はこちら。

1セント銅貨大のブラックホールが地球に生じたら、確かに地球は破壊されすべての生命が全滅するだろう。だがそのプロセスはおそらく、上の映像とは違ったものになりそうだ。

1セント銅貨大のブラックホールは、後で説明する理由から、地球とほぼ同じ質量を持つ。

スタンフォード大学の素粒子物理学者フランク・ハイルは以前、地球の核に1セント銅貨大のブラックホールが現れたときに起きる現象について見解を発表したことがある。ハイルの意見では、地球は破壊されるが、その過程は単純ではない。地球は内側に潰れるだけでなく、外向きの圧力と、地球の自転の力も働く。

ハイルによれば、ブラックホールが破壊的なのは、その質量だけでなく、激しい熱と放射線を放出するからだ。それによって、地球の一部はブラックホールに吸い込まれることなく、宇宙に吹き飛ばされる可能性があるという。

円盤状になって回転

知識共有プラットフォームQuoraで、ハイルはこう解説した。「ブラックホールに近いところにある物質がブラックホールに向かって落下を始めると、物質は非常に高い密度に圧縮され、それに伴って高熱が発生し、温度が上がる。高温になったことによってガンマ線やX線、その他放射線が放出され、ブラックホールに吸い込まれる他の物質を加熱する」

「その結果、地球の外側の層に強い外向きの圧力が生じ、最初はその落下速度が遅くなり、最後は外に吹き飛ぶ」

一方、ブラックホールに向かって落下する内側の部分には地球の自転の力が残っており、外側が小さくなったことで回転速度が増していく、とハイルは説明する。

次に、ブラックホールに落ちていく塊はスピードを上げながらブラックホールの周りを回り始める。こうして地球に残った物質はすべて、ブラックホールの周りを回り続けることになる。

「このときの回転の運動量は、物体のブラックホールへの落下を遅らせる。その結果、ブラックホールの周囲に降着円盤(重い天体の周囲を公転しながら落下する物質によって形成される円盤状の構造)のようなものが形成される」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、麻薬カルテル撲滅へプエルトリコに戦闘機10機配

ワールド

プーチン氏、ロシア経済の停滞否定、金融引き締めを擁

ワールド

アフガン東部で2度の強い余震、被害拡大に懸念 国連

ビジネス

英小売売上高、7月は前月比+0.6% 予想上回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害」でも健康長寿な「100歳超えの人々」の秘密
  • 4
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 5
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 6
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 7
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 8
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 10
    SNSで拡散されたトランプ死亡説、本人は完全否定する…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 7
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中