最新記事

クーデター

ロケット砲で80人以上が死亡、200人以上が行方不明か 内戦の危機迫るミャンマー情勢

2021年4月11日(日)15時18分
大塚智彦

9日、ミャンマーのバゴー市で、デモに参加していた市民を国軍が包囲し、銃火器などを発砲。その結果これまでに少なくとも80人以上が死亡し、200人以上が行方不明となる惨事が起きた。写真は市民を取り締まる国軍。REUTERS

<国際社会の批判にもかかわらず、ミャンマー国軍はデモ参加者への弾圧を容赦なく続け、武装勢力も巻き込んだ内戦に発展する恐れも>

2月1日のクーデターで政権を奪取した国軍が、抗議活動を続ける市民への実弾発砲などを続けるミャンマー。情勢は日に日に混迷の度が深まり、打開へ向けた一筋の燭光すらまったく見えない状況が続いている。

そんななか4月9日、中心都市ヤンゴンの北に位置する古都バゴー市で、デモに参加していた市民を国軍が包囲し、銃火器などを発砲。その結果これまでに少なくとも80人以上が死亡し、200人以上が行方不明となる惨事が起きた。

これは地元のメディア「イラワディ」や米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」、オンラインメディア「ミャンマー・ナウ」などが11日に伝えたもので、鎮圧では銃器以外に対戦車用のロケット砲や迫撃砲まで使用されたといわれ、もはや「デモ鎮圧というより国軍事的攻撃」による「市民の虐殺」との指摘が強まっている。

ミャンマーでは2月1日のクーデター以降、国軍の発砲などで犠牲となった市民はすでに600人以上といわれ、3月27日の国国軍記念日には1日で100人以上が殺害された。

ただしこの時の数字は1日のミャンマー全土での犠牲者数だったが、今回のバゴー市の場合は1日に1都市で発生した犠牲者数としてはこれまでで最悪となるとみられている。

負傷者手当ても国軍が拒否

これまでの各メディアの報道を総合すると4月8日から9日にかけてバゴー市内で反国軍デモに参加していた市民を国軍が包囲し、逃げ道を封じたうえで銃、ロケット砲、迫撃砲などで一斉に攻撃したという。ロケット砲は合計で7発使用されたとの未確認情報もある。

さらに国軍がバゴー市内で捕まえた男性市民を裸にしたうえロープで縛り、バイクで引きずり回すという残虐な行為も目撃され、この男性はその後死亡が確認されたという。

犠牲者や負傷者は市内の学校や仏教寺院に収容されたが、負傷者の手当てを僧侶が申し入れたが国軍はこれを拒否したため、治療もできなかったといわれている。

その後9日夜から10日朝にかけて国軍が犠牲者の遺体と負傷者を収容して運び出したものの、どこへ運ばれたのか、負傷者はどうなったのかについては情報がなく、行方不明者の大半はこの時の負傷者とされ、その安否が気遣われる状況となっているという。

バゴー市内の寺院などには10日以降も兵士らが陣取って市内の監視と警戒を継続しているため、一般市民は屋外にまったく出ることができない状況が続いている。また携帯電話も一時的に遮断されて現地の状況が不明の点も多いという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

自民総裁選きょう投開票、決選にもつれ込む公算 夕方

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P最高値更新、ハイテク下げ

ワールド

トランプ氏、オレゴン州最大都市への支援削減検討を指

ワールド

米軍、ベネズエラ沖の公海で「麻薬船」攻撃 4人死亡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 5
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 6
    「吐き気がする...」ニコラス・ケイジ主演、キリスト…
  • 7
    「テレビには映らない」大谷翔平――番記者だけが知る…
  • 8
    墓場に現れる「青い火の玉」正体が遂に判明...「鬼火…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 10
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中