最新記事

日本社会

3度目の緊急事態宣言発出へ 日本経済マイナス成長のリスク

2021年4月23日(金)09時35分
銀座三越前

政府が東京都や関西圏に3度目の緊急事態宣言を発令すれば、4─6月期の実質国内総生産(GDP)の下振れは避けられないとの見方が多い。2度目の宣言に比べて厳しい措置となる見通しで、GDPの約5割を占める消費に打撃となる。都内の百貨店で22日撮影(2021年 ロイター/Androniki Christodoulou)

政府が東京都や関西圏に3度目の緊急事態宣言を発令すれば、4─6月期の実質国内総生産(GDP)の下振れは避けられないとの見方が多い。2度目の宣言に比べて厳しい措置となる見通しで、GDPの約5割を占める消費に打撃となる。期間や対象地域が拡大すれば足元の輸出の持ち直しを打ち消し2四半期連続のマイナス成長となるリスクがある上、度重なる宣言は経営者の心理的なダメージを大きくし、廃業や倒産の増加も懸念される。

緊急事態宣言、拡大・延長なら消費中心にGDPマイナスに下押し

今回の緊急事態宣言は、飲食店に時間短縮営業を要請した2回目の宣言に比べて措置の「強度」が増すとみられている。みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは「本来なら感染対策の本丸はワクチン外交や医療キャパシティーの拡充であるべきだが、オリンピック開催前の感染終息を狙うなら間に合わない。自粛措置に踏み切らざるを得ないということなのだろう」と話す。

大和総研の神田慶司シニアエコノミストは、東京都、大阪府、兵庫県、京都府の4都府県に昨年春の宣言時に近い措置が取られると想定すると、GDPへの影響は1カ月あたり6000億円程度で、4─6月期GDPを年率1.8パーセントポイント程度押し下げられると試算する。これが全国に発令された場合は1兆6000億円となり、年率4.7パーセントポイントの押し下げとなる。さらに期間が長期化すれば「GDPは4─6月期にV字回復するどころか、2四半期連続のマイナスとなる可能性がある」とみている。

大和総研は3月初旬時点でGDPは1─3月期が前期比年率マイナス5.1%、4─6月期は同プラス4.8%と予想していたが、宣言の内容や影響を精査し予想を下方修正する予定という。

肝となるのはやはり消費で、休業や時短に対する強い要請を伴った緊急事態宣言が4都府県に4月25日から5月11日まで発令された場合、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは消費が6990億円分失われ、失業者は2万7700万人増加すると予想する。

木内氏は、弱い内需に対し、米国向けなどの輸出が伸び経済を下支えする構図を想定し、現段階で4─6月期GDPはプラス2─3%程度と見込んでいる。しかし、今後、宣言の対象や期間が拡大すれば消費の落ち込みが輸出の回復を凌駕し、GDPはマイナス5━6%程度まで押し下げられる可能性もあるという。

みずほ証券の小林チーフエコノミストも、日本のGDPの3分の1程度を占めている4都府県に緊急事態宣言が宣言が発令された場合、対策の中身によっては4000億円から6000億程度の消費が失われると試算している。

ロイターが4月に実施したエコノミスト調査(回答期間4月6日―14日)では、GDPは1─3月期にマイナス5.4%と落ち込んだ後、その反動で4─6月期はプラス4.7%へ回復すると見込まれていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中