最新記事

ワクチン

イタリア、ワクチン接種後の死亡めぐり検察が捜査 医師と看護師に業務上過失責任は問えるか?

2021年3月28日(日)13時22分

アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンに深刻な副反応の懸念が広がる中、欧州各国では接種中断の動きが相次いだ。とりわけイタリアでは、接種後の死亡をめぐって犯罪容疑が持ち上がり、混迷の度が深まっている。写真はローマで9日撮影(2021年 ロイター/Guglielmo Mangiapane)

アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンに深刻な副反応の懸念が広がる中、欧州各国では接種中断の動きが相次いだ。とりわけイタリアでは、接種後の死亡をめぐって犯罪容疑が持ち上がり、混迷の度が深まっている。

今月11日、シチリア島の都市シラクサの検察官は、医師2人、看護師1人に対し過失致死容疑での捜査を開始した。ある海軍将校が、アストラゼネカ製ワクチンの接種を受けてから数時間後に急死したことが発端だ。

ガエタノ・ボノ検察官は、同じ製造ロットのワクチン数万回分をイタリア全土で差し押さえることも命じた。ボノ検察官はロイターの取材に対し、予防的な措置だと説明しているが、医療従事者たちは口々に不必要な措置だとの怒りの声を上げている。

イタリアも他国同様、コロナ危機の克服に向け、ワクチンの集団接種に希望を託している。同国のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)による死者は欧州連合(EU)加盟国の中では最多の約10万5000人。そればかりか、コロナ危機は同国に第二次世界大戦後では最悪の景気後退をもたらしている。

ワクチン希望は国民の6割

今年9月までに国民6000万人の大半にワクチン接種を行うという計画は、前途多難なスタートを切った。ワクチン供給のペースが予想以上に遅れているうえ、他社製に比べ輸送が容易で低コストであるアストラゼネカ製ワクチンの評価が芳しくないためである。

シラクサの事件から数日後、イタリア北部の検察官が警察に対し、やはり接種後の急死事例を受けて、同社ワクチンの別の製造ロットを押収するよう命じた。

イタリアの司法当局の動きに続いて、ドイツやフランス、イタリアなど欧州の10数カ国が同社製ワクチンの接種を中断した。接種を受けた人の中に稀少な血栓症がごく少数見られたとの報告を受けた措置である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中