最新記事

住まい

持ち家 vs 賃貸? いいとこ取りの第3の選択が、コロナ禍のNYで脚光

2021年3月18日(木)17時50分
青葉やまと
賃貸 vs 購入

sturti-iStock

<賃貸 vs 持ち家論争は永遠のテーマだが、第3のオプションにもご注目。コロナ禍のニューヨークでは、両方をいいとこ取りした居住契約が脚光を浴びている......>

ニューヨークではコロナ禍の昨年から、賃貸と購入のハイブリッド版ともいえる居住契約が人気を集めている。Rent-to-Own(購入選択権付き賃貸)と呼ばれるもので、いわば「お試し賃貸期間」つきの購入契約だ。実際に数年程度住んでみて、気に入れば購入しても良いし、しないのもまた自由だ。

間取りの使い勝手、その街の雰囲気、住人の様子など、実際に暮らしてみないと見えてこないポイントは多い。住宅という大きな買い物をするにあたり、賃貸でお試し期間を過ごせるのは大きなメリットだ。

賃貸期間中は家賃が発生するが、その一部は購入時の頭金に充当されるため、通常の賃貸物件に住む場合と比べて非常に無駄が少ない。もし購入を見送る場合でも、違約金などのペナルティは一切ないため、次の場所を見つけて移住するだけだ。

賃貸期間は個別の契約次第だが、1〜3年とするのが一般的になっている。期間終了後は物件の購入または退去の二択となり、原則として賃貸契約を更新して住み続けることはできない。そのため賃貸期間部分に関しては、日本でいう定期借家契約に近い契約形態と言えるだろう。ここは唯一、借り手に不利なポイントだ。

フォーブス誌は、借り手の視点から多くのメリットを挙げている。購入する場合の価格は契約時に決定されるため、賃貸が終了した時点で周囲の不動産相場が顕著に下がっていれば、ノーリスクで購入を辞退することができる。

また、現時点で収入やローンの与信スコアなどが十分でない場合、物件の購入権をキープしつつ、賃貸終了までにより良い職を目指すという選択肢も生まれる。借り手にとって非常に柔軟なプランだ。

厳密にはRent-to-Ownには2つのタイプがあり、以上はこのうちリース・オプションと呼ばれるものだ。ほかにリース・パーチャスと呼ばれる契約形態があり、そちらでは賃貸期間終了後の購入が契約上の義務となる。

当然ながら借り手にとっては、選択権を残した前者の方が有利だ。この形式でより良いマンションへの引っ越しに成功した、ニューヨークに暮らすカップルの事例を見てみよう。

実質おなじ家賃で、ボロ家から築浅へ

ニューヨーク・タイムズ紙は、本プランを実際に利用したカップルの記事を掲載している。

テキサスで輸入業を営むキンブロ氏は、仕事で訪れるニューヨークにもマンションの一室を借りていた。26平米で月額約29万円という高額な家賃も、ニューヨークの相場からすれば不満はなかったという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエルがシリア攻撃、少数派保護理由に 首都近郊

ワールド

学生が米テキサス大学と州知事を提訴、ガザ抗議デモ巡

ワールド

豪住宅価格、4月は過去最高 関税リスクで販売は減少

ビジネス

米関税で見通し引き下げ、基調物価の2%到達も後ずれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中