最新記事

住まい

持ち家 vs 賃貸? いいとこ取りの第3の選択が、コロナ禍のNYで脚光

2021年3月18日(木)17時50分
青葉やまと

しかし交際相手と同居することになり、寝室と小さなキッチンという狭さに二人の不満が爆発した。風呂では排水が逆流し、ネズミが出るなど、環境の悪さにも辟易していたようだ。

とはいえ、テキサスに購入した自宅のローンが残っているため、ニューヨークで新たな物件を買うことは難しい。そんなキンブロ氏を救ったのがRent-to-Ownだ。

幸運にも、住み慣れたローワー・イーストサイド地区の一角に、小綺麗な築浅マンションを見つけることができた。元モデルルームのため家具付きという好条件だ。広さは同程度だが、竹林に囲まれた瀟洒な専用庭があり、ロックダウン中もストレスなく外気に当たることができる。二人はすぐに移住を決めた。

家賃は約65万円となり、以前の物件の倍ほどかかっている。しかし、1年間の賃貸期間後に購入を決めた場合は、すでに払った家賃の50〜75%を頭金に繰り入れることができる。実質的に同程度の家賃でかなり良い物件に移住できた計算だ。

キンブロ氏は慎重で、子供が生まれると手狭になることから、購入するかは未定だという。購入を見送る場合には家賃の一部返金などは得られない。とはいえ、1年後の家族構成に応じて後で決断できるのもまた、大きなメリットの一つだ。

家主目線でも合理的

非常に柔軟なRent-to-Ownだが、一方で家主側から見た場合は妥当な契約なのだろうか。率直なところ、通常の売買契約よりはやや不利だと見ることもできる。賃貸期間後に確実に売却できる保証はないため、将来の見通しが立ちづらいためだ。

また、家主としては早期に一括で売却収入を得たいという心理が働くため、従来であればこのように賃貸期間を挟む契約は提案しづらかった。

しかし、コロナを境に状況は急変する。リモートワークの普及とともに、家賃が高く手狭なNYの物件が敬遠され始めたのだ。家主としては売却の可能性を残しながらも、なんとか当座の資金を得たいという状況となった。

そこで希望の光となったのがRent-to-Ownだ。コロナ禍で物件価値が下がっているいま、おそらく高い価格での売却は望めない。空き家にしておくよりはRent-to-Ownで毎月の家賃収入を確保した方が、家主にもメリットがあるのだ。

本方式は目新しいものではなく、旧くは80年代など、金利上昇によって住宅市場が不調となるたびに流行してきた。フォーブス誌は、ニューヨークやマイアミなど、住宅価格が高騰しているエリアに多く見られると説明している。現代のコロナ不況で蘇った、借り手に有利なプランと言えるだろう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中