最新記事

東日本大震災

災害大国だからこそ日本の日常にある「奇跡」

2021年3月15日(月)14時40分
にしゃんた(羽衣国際大学教授、タレント)
東日本大震災から10年

日本の防災意識は高いがそれでも万全ではない(東日本大震災から10年を迎えた福島県磐城市の海岸) Kim Kyung Hoon-REUTERS

<インド洋津波災害でも、インドネシアのシムル島では津波を語り継いだために起きた奇跡があった>

はじめに、東日本大震災で亡くなられた方々とご遺族の皆さまに哀悼の意を表するとともに、未だ避難生活を送られている方々、全ての被災者の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

東日本大震災が発生した日、牙を剥き出し陸地をえぐりながら迫る津波の凄まじさ、人々の大切なものを破壊し、根こそぎさらってゆく無情さ、そして親族、友人の無事を祈る人びと。それらの映像が未だに鮮明に脳裏に焼きついている。被災地からの映像を見ているだけでもショックは大きく、仕事もまともに手につかなかった。状況が少し落ち着いてからは被災地に出向き、ヘドロ掻きや献血推進活動、仮設住宅や学校などで落語などもさせていただいた。

今年2月13日に発生したマグニチュード7.3の地震が、10年前の東日本大震災の余震だと見られるというニュースに「あの地震はまだ終わっておらず、忘れるな」と喝を入れられたような気がした。未だに700人近くが仮設住居に、5万人近い避難者が全国に散らばって暮らしている。岩手、宮城と福島の人口は震災前と比べ、およそ30万人減少した。果たして被災地の街はいつの日か元の状態に戻るのだろうか。

日本が災害大国であることは周知の事実だ。日本の面積は世界全体の0.28%だが、ここに世界の活火山の7%が集中し、マグニチュード6以上の地震の20.5%がこの日本で起きている。さらには、世界で発生する自然災害の被害額の11.9%が日本だ。ただ日本での災害による死者数は世界のわずか0.2%と低い。驚くべき数字だが、だがむしろ災害が多い中で生き延びる力がこの国の人びとに備わっていることの証明でもある。

ただ東日本大震災で1万5899人が命を落とし、2525人が行方不明であることを考えても、日本人の命を自然災害から守る力は万全ではない。

スリランカの「想定外」

津波から命を守るための三陸地方に伝わる「津波てんでんこ」「命てんでんこ」がある。その教えによって助かった命もあれば、一方で高齢者や家族の救助に向かったことで亡くなった消防団員や市民の方も大勢いた。あるいは防潮堤がある町の避難実施率は1割程度で、乗り越えてきた津波にのみ込まれた方々もいた。先祖代々が後世のために残した津波の記録や印が薄れてきたころに自然は襲いかかってくるのかもしれない。ただ、それでも日本人の自然災害と共に生きる力は優れている。私のような新米の日本人が基本的に口を挟む余地はないが、言いたいことが全くないわけではない。

実は、母国スリランカも津波被害を受けた。今から16年前の2004年12月26日のインド洋大津波だ。マグニチュード9.0のインドネシア・スマトラ沖地震が起き、発生した津波によって10カ国以上が襲われ、死者・行方不明者は28万人に及んだ。スリランカは震源地から1600キロ離れていたため、基本的に揺れを感じることはなかった。そして、津波が到達するまで2時間の猶予があり、命を守るための十分な時間があったにもかかわらず死者・行方不明者を合わせると4万959人が命を奪われた。東日本大震災の2倍以上だ。その最大の理由は「想定外」という一言に尽きる。

自然災害において「想定外」は禁句だ。ただ当時のスリランカには自他共に認める桁違いの想定外があった。日本人には津波についての基本知識がある。年に何回も地震が起きる度、津波の心配はあるかないかの速報情報が出される。日本人にとって津波は身近にある。その点スリランカ人はどうか。ここでクイズを出したい。「スリランカ人が今回2004年に津波を経験したが、その前の最後の津波はいつだったでしょう?」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国外相、年初のアフリカ歴訪開始 戦略的に重要な東

ワールド

イエメン分離派指導者が逃亡、リヤド行き便に搭乗せず

ワールド

中国、航空機リースや医療でアイルランドとの協力深化

ワールド

中絶禁止は州憲法違反、米ワイオミング州最高裁が無効
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 5
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 6
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 7
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 8
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 9
    砂漠化率77%...中国の「最新技術」はモンゴルの遊牧…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中