最新記事

花粉

花粉飛散量が増えると新型コロナへの感染リスクが高まることがわかった

2021年3月11日(木)15時45分
松岡由希子

花粉症でなくても、新型コロナへの感染リスクは増大する...... peterschreiber.media-iStock

<ミュンヘン工科大学などの研究によると、新型コロナ感染率の変動の44%が花粉への曝露と関連があり、花粉濃度の上昇から4日後に感染率が上昇する傾向があることがわかった...... >

大気中の花粉飛散量が増えると、新型コロナウイルスへの感染リスクが高まるおそれがあることが明らかとなった。

「アレルギーの有無にかかわらず、自然免疫が弱まり、感染しやすくなる」

独ミュンヘン工科大学の研究チームは、2019年9月11日に発表した研究論文において「花粉が気道の細胞で抗ウイルス応答を伝えるタンパク質に干渉することにより、アレルギーの有無にかかわらず、風邪を引き起こす呼吸器ウイルスの一種『ライノウイルス』への自然免疫が弱まり、感染しやすくなる」ことを示していた。

ミュンヘン工科大学、米コロンビア大学らの国際研究チームは、この研究結果をふまえて「大気中の花粉飛散量が増えると新型コロナウイルスへの感染率が上がる」との仮説を立て、欧州、北南米、アジア、アフリカ、オセアニアの世界31カ国を対象に、2020年1月1日から4月8日までのデータを用いて、新型コロナウイルスへの感染率と花粉濃度の関連を調べた。

花粉濃度の上昇から4日後に感染率が上昇する傾向がある

2021年3月23日付の学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」で発表された研究結果によると、気温と湿度との相乗効果のもと、平均して感染率の変動の44%が花粉への曝露と関連していた。

花粉濃度の上昇から4日後に感染率が上昇する傾向があり、ロックダウン(都市封鎖)の措置を講じない場合、1立方メートルの大気中の花粉飛散量100粒あたり、感染率が平均4%上昇した。なお、厳格なロックダウン下では、感染率の上昇幅は半減した。

「感染リスクの増大は、花粉症の人に限られるものではない」

研究論文の共同著者でコロンビア大学の植物生理学者ルイス・ジスカ准教授は「花粉への曝露による新型コロナウイルスへの感染リスクの増大は、花粉症の人に限られるものではなく、一般にみられる反応だ。アレルギー反応を引き起こさない花粉でも、新型コロナウイルスへの感染率の上昇との関連がみられる」と指摘。「花粉の飛散量が多い日は、なるべく屋内で過ごし、屋外に出るときはフィルター入りマスクを着用して、花粉への曝露を最小限にとどめること」を勧めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中