最新記事

米軍

黒人国防長官が挑む米軍のダイバーシティー

NAVY FIGHTS EXTREMISM

2021年2月26日(金)18時30分
ナビード・ジャマリ、トム・オコナー

しかし見張りの乗組員が、もしも外からやって来る脅威を見分ける方法を事前に教わっていたら、彼らは船を守ることができたかもしれない。必要なのはそういう教育だ。軍隊の再生は安全保障に関わる問題だ。米軍主導のイラク戦争に海兵隊の下士官として参加したルーベン・ガイエゴ(現アリゾナ州選出下院議員)は、軍人の多様性を受け入れることが重要だと説く。「誰がアメリカの軍隊を構成し、誰が軍隊の未来を担うのか。それが変われば軍隊の文化も変わっていく」とガイエゴは本誌に語った。「軍は多様性を広げなくてはならないと思う。これから軍隊に入ってくる若者は多様な人種、文化に属している。そして未来は有色人種の若者にある」。そういう世代を育てるのに失敗したら「国家安全保障上の大問題だ」とガイエゴは言う。

そうした変化は、米軍に影響を与える別の重要な状況の変化と関連している。ガイエゴによれば、今は中国の脅威への対応が最優先であり、この新しい敵と対峙するには組織も心構えも一変させる必要がある。

NW_BKG_20210225191803.jpg

極右の過激派組織プラウドボーイズの集会で叫ぶ参加者たち(2020年9月26日) LEAH MILLISーREUTERS

「今の流れなら、アメリカに敵対する唯一の国は中国になる。今のアメリカに必要なのは、中国の野心を封じ込めることだ」とガイエゴは言う。「中国の脅威はロシアよりも大きい。なぜなら彼らは一丸となって向かってくるからだ」

ドナルド・トランプ前大統領の下で悪化した関係を修復するため、今の中国政府はアメリカ政府との関係改善に向けた探りを入れている。就任したてのジョー・バイデン大統領は現在、トランプの負の遺産を取り除き、国内の右翼過激派に対処することに忙殺されているが、それでも中国に対しては引き続き厳しい姿勢で臨むつもりでいる。

脅威が外から来るのか、内に潜んでいるのかは別として、とにかく備えを固めること。それが大事だと、海軍の報告書は強調している。兵員構成の多様化も過激主義の排除も、その努力の一環だ。

「全ては戦場での闘いへの備え」だとノウェル中将は言う。「多様性を備えた軍隊が多様性を生かせれば、より強くなれる。それは証明済みだ。そして私たちは最強のチームをつくらねばならない。だからこそ多様性が必要なのだ」

<本誌2021年3月2日号掲載>

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー

ビジネス

NY外為市場=円急落、日銀が追加利上げ明確に示さず

ビジネス

米国株式市場=続伸、ハイテク株高が消費関連の下落を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中