最新記事

米中関係

米中首脳電話会談を読み解く――なぜ「とっておきの」春節大晦日に?

2021年2月12日(金)17時48分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

四、 習近平は強調した:現在の不確定性に満ちた国際情勢に当たり、中米は国連安保理常任理事国として、特殊な国際的責任と義務を負っている。世界の平和的発展に歴史的な貢献を果たすため、双方ともに手を携えて世界の潮流に対応し、共にアジア太平洋地区の平和的安定を維持し保護していかなければならない。

五、 バイデンは表明した:中国は悠久の歴史を持つ偉大なる文明の国家であり、中国人民は偉大なる人民である。米中両国は衝突を避けなければならない。気候変動などの広範な領域においては協力することができる。アメリカは喜んで中国とともに、相互尊重の精神に基づき、率直で建設的な対話を続け、誤解や誤判断を避けるべく相互理解を深めていく。

六、両国首脳は本日の会話が世界に対して積極的なシグナルを発信することを確認し合い、双方とも米中関係と共通の関心事に関して今後も密接な連携を保つことに同意した。

中国側の発表は以上だ。

両国の発表内容の差異から何が見えるか?

さて、両国の発表内容の差異から何が見えるかを読み解いてみよう。

基本的状況として、たとえば日本のメディアでは、あたかもバイデンが習近平に「香港弾圧や台湾への威嚇あるいはウイグルの人権問題で、勇猛果敢に、強硬な要求を突き付けた!」というニュアンスで報道されていることが多い。

本当にそうなのかを、きちんと「現実」を直視して確認してみよう。

(1)バイデンが主張した「香港、台湾、ウイグル」に関して習近平は内政干渉だと突っぱねたと報道しているが、それに対するアメリカ側の反論はない。

(2)「地域の安定」問題に関しても、バイデンが「中国が独断的行動を増している」と責めたのに対して、習近平は「中国の主権と領土保全の問題だ」と突っぱねたと報道しているが、それに対するアメリカ側の反論はない。

(3)何よりも大きいのは、中国側発表の五に書いてあるように、バイデンが中国人民を「偉大なる人民」と讃えていることだ。そして「米中両国は衝突を避けなければならない」とバイデンが言っているということである。

(4)決定的なのは、五にあるように、バイデンが「アメリカは喜んで中国とともに、相互尊重の精神に基づき、率直で建設的な対話を続け、誤解や誤判断を避けるべく相互理解を深めていく」と述べたことだ。これでは話が違うではないかと、大方の人が思うだろう。バイデン側は「いや、私はそのようなことは言ってない」とは反論していないので、「言った」と解釈するしかない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

WHO、成人への肥満症治療薬使用を推奨へ=メモ

ビジネス

完全失業率3月は2.5%に悪化、有効求人倍率1.2

ワールド

韓国製造業PMI、4月は約2年半ぶりの低水準 米関

ワールド

サウジ第1四半期GDPは前年比2.7%増、非石油部
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中