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「庶民派」菅首相を突き刺した、家族スキャンダルの破壊力

A Deep Connection

2021年2月9日(火)17時15分
北島 純(社会情報大学院大学特任教授)

国家公務員倫理規程は国家公務員が「利害関係者」から供応接待を受けることを禁じている。菅氏の長男が取締役の株式会社囲碁将棋チャンネルは、衛星基幹放送事業者として総務大臣の認定を受けている。また長男が部長職を務める東北新社の完全子会社で、CS放送やBS放送向けの番組制作を手掛ける「東北新社メディアサービス」は総務大臣の認定を受けている。

子会社と親会社の「法人格が別」だから利害関係者ではなくなるという抗弁が通用するなら、子会社をつくればいくらでも法を潜脱できることになる。

認定の有効期限は5年。その審査基準は経理的基礎や技術的能力、マスメディア集中排除原則、外資制限など多岐にわたる。審査基準の適合性に関わる情報が入手できたら値千金だろう。

利害関係者と会食をする場合でも「完全自腹」であれば、利益を供与されていることにはならない。しかし、支払額が1万円を超える場合は事前の届け出が要求されており、やむを得ない場合に限って事後的な届け出が許されている。

接待を受けていたことが発覚した後に慌てて実費分を支払っても、供応接待を受けていたという事実が消滅するわけではない。

総務省との密接な関係

接待を受けていたのは、事務次官有力候補の総務審議官以下、全員が旧郵政省出身の放送・通信畑の官僚だ。官民癒着の典型例と言われても仕方あるまい。

今回、なぜ東北新社は総務官僚を接待するのに菅氏の長男を使ったのか。それは菅氏と同省の深いつながり故だ。

菅氏は2005年に竹中平蔵総務相の下で副大臣を務め、06年には総務相に就任した。以来、菅氏と総務省の密接な関係は政界では知らぬ者がいないほどだ。

総務省の幹部官僚が菅氏や菅氏に近い自民党議員の元に日参し、些事に至るまで報告を怠らない姿は有名だった。それは、財務省がこれはと見込んだ議員を財務省シンパに育てるために面倒を見る「伝統芸」よりも徹底していた。菅氏は単なる族議員の範疇を超えた存在になっていた。

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