最新記事

新型コロナウイルス

ドイツ「布マスク禁止令」で感染拡大に歯止めはかかるか?

2021年2月2日(火)18時15分
熊谷徹(ドイツ在住ジャーナリスト)

「今、行動しなければならない」というメルケル首相の訴えは伝わるか MICHAEL KAPPELER-POOL-REUTERS

<約3カ月間ロックダウンを行うもウイルス拡大は止まらず、独政府は特定の状況下における医療用マスク着用を義務化。肯定的な意見は多いが、果たして効果は...>

ドイツ政府は1月19日、商店や公共交通機関の利用の際にはFFP2などフィルター性が高い医療用マスクを着用することを政令で義務付けた。25日から施行され(バイエルン州政府だけは独自に18日から実施)、違反者は250ユーロの罰金を科される。もはや布マスクでは買い物にも行けない。

筆者が住むバイエルン州ミュンヘンのスーパーマーケット。布マスクを着けた中年の女性客が店に入ろうとしたところ、店員に「FFP2マスクを着けないと入店できませんよ」と注意された。女性は店員に「FFP2マスクって何?」と聞き返していた。入り口には「入店時には、FFP2マスクを着けることが義務付けられています」と書いた大きなポスターが貼られているが、女性は見過ごしたのだろう。

だが、先行して施行された同州では既に周知が行き届いており、こうしたケースは例外だ。店内を見回すと子供を除くほぼ全ての客はFFP2マスクを着けている(14歳以下は着用義務免除)。

ドイツでは昨年4月のパンデミック第1波で商店や公共交通機関でのマスク着用義務が導入されたが、種類の指定はなく、大半の人が布マスクを使っていた。

FFP2マスクは、12月頃から薬局やオンラインで比較的容易に入手できるようになった。価格が1枚6ユーロの時期もあったが、最近では1枚1ユーロ前後に下がっている。ドイツ政府は、60歳以上や基礎疾患を持つ人には無料で3枚配布している。またバイエルン州政府は、失業者らに250万枚のFFP2マスクを配り始めた。

FFP2マスクの義務化に踏み切ったのは、約3カ月間ロックダウン(都市封鎖)を行っているにもかかわらず、ウイルス拡大が止まらないためだ。11月2日以降は飲食店や劇場、映画館などの営業、国内観光での宿泊施設提供が禁止された。

12月16日からは食料品店や薬局などを除く全ての商店の営業も禁じられ、学校や託児所も閉鎖。だが直近1週間の10万人当たりの新規感染者数は、1月27日時点で101人と、政府目標(50人)の2倍以上。ロベルト・コッホ研究所によると、29日には1万4000人が感染し、839人が死亡した。

さらに英国で発見された感染力が強い変異株「B・1・1・7」の市中感染がドイツでも起きている。ドイツ政府はFFP2マスクについて「飛沫やエアロゾルからの防護度は94%」で、布マスクよりも高いと説明している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=小反発、ナスダック最高値 決算シーズ

ワールド

ウへのパトリオットミサイル移転、数日・週間以内に決

ワールド

トランプ氏、ウクライナにパトリオット供与表明 対ロ

ビジネス

ECB、米関税で難しい舵取り 7月は金利据え置きの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中