最新記事

パンデミック

イギリスのコロナ変異種「B.1.1.7」、死亡率30%高い恐れ データから読む新たなリスク

2021年1月26日(火)18時00分

英国の科学者が、同国で見つかった新型コロナウイルス変異種について、感染力が高いだけでなく死亡率が従来型より約30%高い恐れがあるとの見方を発表した。2020年3月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

英国の科学者が、同国で見つかった新型コロナウイルス変異種について、感染力が高いだけでなく死亡率が従来型より約30%高い恐れがあるとの見方を発表した。

「B.1.1.7」と呼ばれるこの変異種は、英国で広がっている他の型に比べて感染力が最大70%高いとされ、既に世界各地でも感染が確認されている。米公衆衛生当局者らは、これが3月までに米国で最も支配的な変異種になる恐れがあると指摘している。

英科学者の新たな科学的証拠とは

死亡のリスクの科学的証拠は、英政府の諮問機関である「新型呼吸器系ウイルス脅威諮問グループ(NERVTAG)」が示した。同一のデータ集合体を使った4種類の別々の研究に基づいている。こうした研究は、地域住民のウイルス検査のデータをコロナ死者と関連づける。

分析結果は研究ごとにわずかに異なっていたが、いずれも「B.1.1.7」変異種に感染した人の死亡率が、英国の他の型に感染した人々よりも高いことを示した。

「B.1.1.7」の方が死亡率が低いことを示す分析結果は皆無だった。

NERVTAGはこの結果を1つのモデルにまとめ、同モデルが平均的な死亡率のリスクを推計した結果、約30%高まるとの数字になった。

科学者らは分析結果の確度をどの程度と考えているか

英政府のパトリック・バランス首席科学顧問は22日、様々な小規模情報の集合からデータを取ったため、死亡率の推計には一定の「不確実性」があると述べた。

イングランド公衆衛生局(PHE)の専門家、スーザン・ホプキンズ氏は暫定的な推計値について、変異種感染の流行が確認されている英国の人口のうち、比較的小さな割合を分析した結果だと説明。「全てのデータ源ではなく、一部のデータ源」から得られた科学的証拠が死亡率の高まることを示している状態だと述べた。「まだ、全体像が見えていない可能性はある」とした。

レスター大学の臨床ウイルス学者、ジュリアン・タン氏も、データ量が少ないため、結果は「今後大きく変化する可能性が残る」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港の大規模住宅火災、ほぼ鎮圧 依然多くの不明者

ビジネス

英財務相、増税巡る批判に反論 野党は福祉支出拡大を

ビジネス

中国の安踏体育と李寧、プーマ買収検討 合意困難か=

ビジネス

ユーロ圏10月銀行融資、企業向けは伸び横ばい 家計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中