最新記事

パンデミック

イギリスのコロナ変異種「B.1.1.7」、死亡率30%高い恐れ データから読む新たなリスク

2021年1月26日(火)18時00分

ただ、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の感染症数理モデル教授、ジョン・エドマンズ氏は25日、分析結果の不確実性について意見を問われ、分析結果は「統計上有意」であり真剣に受け止めるべきだと述べた。

エドマンズ氏は「かなり多くの科学的証拠がある。意義は小さくない」とし、一朝一夕ではなく「われわれが数週間かけて取り組んだ」結果だと擁護した。

死亡率が高まる仕組みは分かっているか

科学者らはその点について、まだ確信を持っていない。だが、解明に取り組んでいる。

PHEのホプキンズ氏は「この変異種の科学的証拠はまだ出てきている途中であり、仕組みを完全に理解するための研究は続いている」と述べた。

しかし、この変異種は、人間の細胞により強く結び付くことができるようにウイルスの一部が変異したという点は分かっている。

NERVTAGの座長を務めるオックスフォード大学のピーター・ホービー新種感染症教授は「実際に観察されている感染率上昇および、可能性として考えられる重症化リスク上昇の両方の原因として、これが生物学的に見て最も妥当な説だ」との考えを示した。

レディング大学のサイモン・クラーク細胞微生物学助教授は、より強く人間の細胞と結び付くという特徴が「免疫システムの強い過剰反応を引き起こし、これが症状の最悪化を招き、死に至らしめる可能性」を指摘した。

死亡率上昇はどのくらい懸念すべきか

死亡率が推計で約30%高まるという分析の1つを主導したロンドン大のエドマンズ氏は、この科学的証拠について「非常に深刻な状況暗転だ」と指摘。「このウイルスは非常に深刻なものであり、非常に深刻に受け止める必要がある」との考えを示した。

一方、PHEは書面で、(全ての年齢グループにわたる)新型コロナ感染1回当たりの死亡の絶対リスクは「新たな変異種でも従来型でも、依然として低い」と強調している。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】



ニューズウィーク日本版 コメ高騰の真犯人
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

バーゼル銀行監督委、銀行の気候変動リスク開示義務付

ワールド

訂正-韓国大統領、日米首脳らと会談へ G7サミット

ワールド

トランプ氏、不法滞在者の送還拡大に言及 「全リソー

ビジネス

焦点:日鉄、巨額投資早期に回収か トランプ米政権の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中