最新記事

事件

インドネシア、偽のコロナ陰性証明書発行のシンジケートが暗躍 空港・検疫関係者ら15人逮捕

2021年1月19日(火)20時30分
大塚智彦

新型コロナウイルスの感染が深刻なインドネシアで、偽のコロナ陰性証明書を発行するシンジケートが摘発された。KOMPASTV - YouTube

<コロナ感染が100万人に迫る国は、PCR検査を受けなくても陰性証明が手に入る!?>

インドネシアの首都ジャカルタの玄関口であるスカルノハッタ国際空港(バンテン州タンゲラン)の空港警察は1月15日に、PCR検査などの検査結果に基づくコロナウイルスの「陰性証明書」を偽造して必要とする旅客に販売していたとして15人を逮捕したことを明らかにした。

逮捕者の中には同空港の空港関係者や検疫所関係者なども含まれており、大掛かりな組織的犯行とみて余罪やさらなる容疑者の捜査を続けている。これまでに判明しただけでも2020年10月以降、約200人の乗客に対して「偽の陰性証明書」を作成、販売していたという。

インドネシアではコロナウイルスの感染拡大防止策の一環として、国際線利用による入国者に加えて国内線で都市間を移動する乗客に対してもコロナウイルスに関するPCR検査や抗原検査の受診を義務化。「陰性証明書」を事前に取得して、航空機搭乗に際して提示することが求められている。

しかし航空機搭乗予定の乗客の中には「陰性証明書」の取得や空港への所持を忘れたり、あるいは検査の結果「陽性」になってしまった乗客がおり「偽の陰性証明書」の「顧客」になっていたという。

ジャカルタ首都圏警察報道官は、犯行グループはスカルノハッタ国際空港の主に国内線出発ロビーを中心に口コミやSNSを通じて希望者を集めて、正規の検査を一切受診させずに「偽の陰性証明書」を作成して渡していた疑いがもたれている、と明らかにした。

役割分担した組織的犯行

警察の発表によるとこれまでに逮捕した15人は21歳から54歳で、リーダー格の男性(52)は同空港の元警備担当者という。

リーダーなどが国内線出発ロビー付近で航空機への搭乗を予定しているとみられる乗客に近づいては密かに「検査なしでの陰性証明書を発行できるが必要か」と聞いて回っては顧客を探していたという。

希望者がいた場合は別の男たちが希望者の個人情報を聴取。複数の医療機関の名前を使った「偽の陰性証明書」を空港職員と検疫所関係者が作成していた。

偽造書類作成は空港検疫所のボランティアが協力して検疫施設内の場所を提供し、そこで作成作業を行っていたという。

さらに検疫所関係者らが完成した「偽の陰性証明書」を希望者の手元に届ける役割を担っていたとみている。

乗客は「偽証明書」1通について100万ルピア(約7400円)を支払っていたとされ、2020年10月以降に約200人を対象にして「商売」を行っていたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国、北朝鮮に軍事境界線に関する協議を提案 衝突リ

ワールド

バングラデシュのハシナ前首相に死刑判決、昨年のデモ

ワールド

中国、G20での高市首相との会談拒否 台湾発言を問

ワールド

インタビュー:経済対策、補正で20兆円必要 1月利
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 5
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中