最新記事

アメリカ

今のアメリカは「真ん中」が抜け落ちた社会の行きつく先

2020年12月30日(水)11時05分
金成隆一(朝日新聞国際報道部機動特派員)※アステイオン93より転載

白人のマイノリティー化、根強い同化論

同化に関する不満も根強い。不満を単純化すると「かつての移民は同化したが、最近の移民は同化しない」となる。

「かつての移民」と「最近の移民」という二分法がある。この断層も1960年代に深まった。「かつての移民」とは、アイルランドや東欧南欧からのカトリック教徒やギリシャ正教の移民を指す。彼らも当時は新移民と呼ばれ、差別されたが、彼らは原則西洋からの移民で白人だった。今では、移民一世が貧困層として必死に働き、その子ども世代(二世)が英語を覚えて中流階級に仲間入りし、最終的には同化して「立派なアメリカ人になった」と理解されている。「物語」と呼ぶ方が適切かもしれない。

「かつての移民」は、主流のアメリカ文化に溶け込んだ「メルティング・ポット(人種のるつぼ)」の成功例として語られる。主流とはワスプ(白人White、アングロサクソンAnglo-Saxon、プロテスタントProtestant)文化である。

これに対し、「最近の移民」とは、多くの場合、1965年の移民法改正を機に増えた、ヒスパニックやアジア系を指す。欧州からの移民ではなく、英語を話さない人も少なくない。そのためだろう、「最近の移民」は出身国の生活習慣や言語をアメリカに持ち込み、「堂々と維持している」と批判される。

人口に占める白人(ヒスパニック除く)の割合は、1965年は84%と圧倒的な多数派だったが、2019年に60%まで落ちた。ブルッキングス研究所のウィリアム・フレイは、2045年に白人の割合が5割を切り、ヒスパニックが24.6%、黒人が13.1%、アジア系が7.8%となるとの見通しを示している。大統領ビル・クリントンの1998年の予告は正しかった。「50年もすれば、全米において過半数を占める人種がいなくなる。歴史上これほどの短期間に、これほど巨大な人口動態の変化を経験した国はありません」(1998年6月)

「同化しない最近の移民」に憤りを表明してきたのも、さきほどのブキャナンだ。1992年の党大会では主に宗教の衰退を語ったが、2002年の著作では同化しないメキシコ移民への警戒を強調している。彼の「古い移民」と「今日の移民」の二分法は多くのトランプ支持者に共通する。ブキャナンはこう言う。


 メキシコには、米国に対する歴史的な恨みがあり、国民に深く刻まれている。彼らは、メキシコが若くて弱かったときに、私たちが国土の半分を奪ったと信じている。だからアイルランドやイタリア、東欧からの古い移民と、メキシコからの今日の移民とは米国に対する態度には深刻な違いがあるのだ。(略)私たちは新旧の移民の違い、以前と今日の米国の違いを理解する必要がある。(略)メキシコ人は他の文化から来るだけでなく、多くは人種も異なる。歴史と経験が示す通り、異なる人種の同化ははるかに難しい。アフリカやアジアから来た大勢がいまだにアメリカ社会に完全に参加していない一方で、先祖がドイツから来た600万人のアメリカ人は完全に同化している。(略)乗船した時点で祖国に永遠の別れを告げた古い移民と異なり、メキシコ人の母国はすぐ隣だ。多くは英語を学びたいとも、アメリカ市民になりたいとも願っていない。(略)彼らは国家の中の別の国家になろうとしている。(Patrick J.Buchanan, "The Death of the West: How Dying Populations and Immigrant Invasions Imperil Our Country and Civilization" page 124-126)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イエメン分離派指導者が出国、UAEが手助けとサウジ

ワールド

トランプ氏、ベネズエラ監視の長期化を示唆 NYタイ

ビジネス

英企業、向こう1年の賃金上昇予想3.7% 若干緩和

ビジネス

金、今年前半に5000ドル到達も 変動大きい年とH
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 6
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 7
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 8
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 9
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 10
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中