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今のアメリカは「真ん中」が抜け落ちた社会の行きつく先

2020年12月30日(水)11時05分
金成隆一(朝日新聞国際報道部機動特派員)※アステイオン93より転載

「文化戦争」とは、宗教や人種、エスニシティーの面でさらなる多様化を受け入れるか、否か、という争いとも言えそうだ。今の民主党には「多様性は力だ」とのコンセンサスがある。2020年大統領選の民主党候補バイデンは、副大統領候補に黒人女性の上院議員カマラ・ハリスを選んだ。父はジャマイカ、母はインドからの移民で、主要政党の正副大統領候補として初の黒人女性、アジア系となる。

一方、トランプ以降の共和党では「多様性は国家の分裂を招く」という懸念が吹き出しているように見える。以前には党の支持基盤の多様化をめざす動きがあり、2013年には当時の党の有力上院議員(マケイン、グラハム、ルビオら)が、不法滞在者に永住権の道を開くことと、国境管理の厳格化を両立させる超党派の法案を模索したが、ルビオは2016年大統領選で「裏切り者」と猛反発を受けて敗退した。移民問題で現実的な妥協を模索することが、共和党政治家にとって後のキャリアの地雷になることを示すかのような展開だった。最近は歴史認識の争いも激しく、トランプは「キャンセル・カルチャー」という言葉で、従来の歴史観や文化が「左派ファシスト」に「消し去られそうだ」と危機感を煽っている。文化戦争が激しくなれば、ますます妥協は困難になる。「妥協の不在」である。

相手党は「脅威」、36%が認定

異なる意見を持つ人と出会う機会が少ない「他者の不在」、公共への投資が滞る「パブリックの不在」、文化戦争が激しくなる「妥協の不在」。今のアメリカでは「真ん中」が抜け落ちている。

その結果がルールなき闘争ではないだろうか。「裏切り者」「非国民」「反逆者」など、相手の政治家に向ける言葉は過激になり、2008年大統領選では、民主党オバマが「反米主義者」「テロリスト」と呼ばれた。2016年大統領選では、「ヒラリーを牢屋に送り込め」がトランプ集会で定番スローガンのように連呼され、クリントンの顔写真に銃の照準を合わせた、暗殺をほのめかすかのような図柄のシャツまで出回った。相手を単なるライバルではなく、「敵視」する風潮だ。

この風潮は党派間の意識にも出ている。ピュー・リサーチ・センターは、両党の支持層が相手の党は「国家への脅威になっている」とする「脅威」認識を調べた。2014年時点で、共和党支持層の36%が「民主党は米国への脅威」と考えていた。同様に民主党支持層の27%が「共和党は脅威」と捉えていたという。党派間で、相手を「脅威」と見なすようになっているのだ。

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