最新記事

日本社会

子育て年齢の上昇で日本社会の何が変わる?

2020年12月17日(木)13時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

この30年で既婚女性の子育て期の年齢は4年ほど上昇した Yagi-Studio/iStock.

<家族の介護を担う子ども「ヤングケアラー」の支援が差し迫った課題となっている>

晩婚化・晩産化が進んでいる。40歳を過ぎてからの出産となれば、子育ては60代まで続く。子どもが大学院への進学を希望したら、定年後もかなりの費用負担が必要になることが考えられる。

こうしたケースがどのくらいあるかというと、2019年に生まれた子どもは86万5239人だが、このうちの5万840人(5.9%)は母親が40歳以上だった(厚労省『人口動態統計』)。これはまだ少数派だが、母親が35歳以上の新生児は29.1%にもなる。1976年生まれの筆者が生まれたとき母親は36歳だったが、当時では晩産の部類でも、今では珍しくも何ともない。

時代と共に、子育て期は後ろへとずれ込んでいる。最近では、50代でも小・中学生の子育て中という人は少なくないはずだ。各年齢の既婚女性の何%が子育て中なのか。<図1>は、同居している未成年の子がいると答えた人の割合のグラフだ。各年齢の数値をつないだカーブを、1985年と2015年で比べている。基幹統計の『国勢調査』から作成した。

data201217-chart02.png

ピークを見ると、1985年では35歳だったが、2015年では39歳となっている。この30年間で、子育て中の女性の率のカーブが右にシフトしており、子育て期が中高年期までずれ込んでいることが分かる。

50歳の時点に注目すると、未成年の子と同居している人の率(子育て中率)は、1985年ではわずか7.6%だったが、2015年では52.0%と半数を超えている。一昔前は、50代にもなれば子は独立して親は一息つけていたが、現在はそうではない。50代も立派な子育て期だ。これがどういうインパクトを持つかは、3つの側面に分けられる。

ダブルケア(育児+介護)の負担

まずは親の負担に関わることだ。50代と言えば、親の介護ものしかかってくる。自身の体力も衰えてくる時期に、「育児+介護」のダブルケアを課される人(とくに女性)が増えることになる。両親を郷里において都会に出てきている人も多いので、遠隔介護は増えてくるだろう。子どもが独立した後なら定期的に介護帰省もしやすいだろうが、子育て中となるとそうはいかない。地方においては、老親の見守りサービスへの需要が増すことが考えられる。

2つ目は教育費だ。大学進学該当年齢の子の親はおおむね45~54歳だったが、これが一段ズレて50代後半、場合によっては60歳を超えてしまうことになる。今は、子どもの大学進学期が親の年収ピークとうまく重なっているが、今後はそうではない。これを機に、大学の学費を家計に依存する日本の現状を見直すべきだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

フジHD、株式買い増しはTOBでと旧村上系から通知

ワールド

北京市、住宅購入規制さらに緩和 需要喚起へ

ビジネス

26年度の超長期国債17年ぶり水準に減額、10年債

ワールド

フランス、米を非難 ブルトン元欧州委員へのビザ発給
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中