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アメリカ大麻業界の「ハイ」続くか コロナと合法化で急成長

2020年12月16日(水)11時21分

とはいえ、反対も根強く、依存症の原因になる、医学的な効用を証明する研究が十分に行われていないと主張するグループもある。

アイダホ州、ネブラスカ州では大麻は禁止されている。大麻使用を支持する活動家は、2022年の中間選挙の際に解禁に向けた住民投票の実施を求めている。

早くから大麻事業に投資を行い、メディカル・マリファナのCEOを務めるスチュワート・ティトゥス氏は、2021年は、大麻がアルコールや煙草と同じくらい容易に入手できる年になるかもしれない、と話す。

「まもなくレストランでは、消費者がアルコール飲料か大麻ベースの飲料かを選べるようになるだろう」と同氏は言う。

連邦と州の対立

連邦法のもとでは今も大麻は違法である。そのため、大麻産業は銀行サービスの利用や資金調達で制約を抱えている。

カマラ・ハリス次期副大統領は、こうした規定の変更と大麻の非犯罪化が民主党の政策綱領の一環であると公約している。

業界関係者は、連邦議会での審議を経て何らかの変化に至るには何年もかかるかもしれないと認めつつ、意識の変化はもっと急速に進みつつあるとしている。

11月に行われたギャラップによる世論調査では、大麻合法化を支持する声は68%に達し、昨年の66%からさらに上昇して過去最高の水準となっている。

またギャラップが行った別の世論調査では、米国の成人の70%が、大麻を吸うことは「倫理的に許容できる」と考えており、1年間で5ポイントの上昇を見せた。

カリフォルニアの大麻生産企業ザ・ペアレント・カンパニーのスティーブ・アランCEOは、ノースダコタ、サウスダコタ、ミズーリなど従来は保守的であるとされる州においても大麻合法化の支持者が安定多数に達していることは、共和党の連邦議会議員や地方政治家を説得するうえで有益ではないか、と述べている。

「大麻合法化の措置を大差で可決した州で選出された共和党上院議員も多いので、連邦レベルでの大麻規制の改革に向けて共和党からも支持の拡大が見込めるだろう」と同氏は言う。

アケルナのジェシカ・ビリングスリーCEOによれば、各州政府から同社への調査依頼は記録的な件数に達しているという。パンデミック下での企業倒産により税収が減少しており、新たな財源が求められているためだ。

同氏によれば、「政治家は大麻合法化を、この経済的に不確実な時代に財政収支を改善し雇用を創出するための素晴らしい方法だと考えている」という。

だが、カナダの経験を考えれば、そう浮かれてばかりもいられないかもしれない。

カナダは2018年、主要国のなかでは真っ先に嗜好用大麻を合法化した。だが、過剰供給や闇市場、収益性の低下により、関連業界の期待は裏切られた格好だ。

生産者や調査会社は、米国の方が成功しやすい条件が整っていると言う。潜在的市場の規模が巨大で、新製品もあり、大麻のセラピー効果に対する認知度も高いからだ。

ザ・ペアレント・カンパニーのアランCEOは、「かつては『嗜好用の麻薬』とされたものが、精神・身体双方に潜在的な恩恵のある、多くの錯化合物としてより良く理解されるようになりつつある」と語る。

Shariq Khan (翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


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