最新記事

昆虫

ミツバチが動物の糞を巣に置いてオオスズメバチからの攻撃を阻止していた

2020年12月11日(金)18時10分
松岡由希子

巣の入口の周りに動物の糞を置いてオオスズメバチからの攻撃を阻止していることを発見 Youtube

<ベトナムで生息するトウヨウミツバチが巣の入口の周りに動物の糞を置いてオオスズメバチからの攻撃を阻止していることが発見された......>

アジアで生息するトウヨウミツバチにとって、オオスズメバチは天敵だ。強力な毒を持ち、攻撃性の高いオオスズメバチは、ミツバチの巣を集団で攻撃する。このような脅威に対して、トウヨウミツバチは、巣の中に蓄えている食糧や大きな蜂群(コロニー)を保護するための行動を進化させてきた。

たとえば、トウヨウミツバチの亜種のニホンミツバチは、巣内に侵入したスズメバチを集団で取り囲んで「蜂球」を形成し、発熱して蒸し殺すことで知られている。

トウヨウミツバチが道具を使う動物であることを示唆する初の事例

カナダ・ゲルフ大学の研究チームは、ベトナムで生息するトウヨウミツバチが巣の入口の周りに動物の糞を置いてオオスズメバチからの攻撃を阻止していることを発見し、2020年12月9日、オープンアクセスジャーナル「プロスワン」でその研究成果を発表した。トウヨウミツバチが道具を使う動物であることを示唆する初の事例としても注目されている。

研究チームは、オオスズメバチの攻撃が盛んになる8月下旬、ベトナムの72カ所の養蜂家を対象に調査を行った。その結果、セイヨウミツバチのみを飼育する5カ所を除き、残りの67カ所でトウヨウミツバチが飼育され、そのうち94%にあたる63カ所で巣の入口に斑点があることが確認された。

トウヨウミツバチを飼育する養蜂家が保有する蜂群の中央値は15個で、平均すると74%の蜂群で巣の入口に斑点があった。ミツバチが水牛の糞を集めている様子を目撃したある養蜂家によると、この斑点は動物の糞だという。

働き蜂が動物の糞を探し、これを集めて巣に持ち帰る

研究チームは10日にわたって蜂群をモニタリングし、高確率で巣の入口の周りに斑点が集中していることを確認した。また、現地観察により、トウヨウミツバチの働き蜂が動物の糞を探し、これを集めて巣に持ち帰り、入口にくっつけていることもわかった。働き蜂は、研究チームが養蜂場の近くに置いた糞だけでなく、近隣の鶏舎の糞や石鹸カスなども集めていた。

研究者たちは、こうした糞の匂いがスズメバチを遠ざけるか、ミツバチが発する匂いを隠すためという可能性もあると考えている。

入口にほとんど糞がついていない巣に比べて、入口に糞が付いている巣では、オオスズメバチが集団で攻撃するケースが少なく、オオスズメバチが巣の入口を噛んで侵入しようとすることも顕著に低かった。

ハチにとってこれが道具であることを示す

研究論文の筆頭著者で米ウェルズリー大学のヘザー・マッティラ准教授は、英紙ガーディアンの取材で「ハチは、巣の中に病原体を持ち込まない衛生的な動物として知られているため、糞を利用していることには驚いた」と意外な発見に驚きを示すとともに、「ハチが周りの環境から糞を集め、これを操り、活用しやすいようにそのものの特性を変えているという事実は、ハチにとってこれが道具であることを示すものだ」とコメントしている。

Snippet: Giant hornets on the attack? Try a little water buffalo poop

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米軍などが駐留するイラクの空軍基地に複数のロケット

ワールド

米、日豪印とアジアのワクチン戦略策定 中国に対抗=

ワールド

ロシア、米国の制裁に報復へ=外務省報道官

ビジネス

ZOZO創業者の前澤氏、民間人月旅行の同乗者を8人

MAGAZINE

特集:人民元研究

2021年3月 9日号(3/ 2発売)

一足先にデジタル化する「RMB」の実力 中国の通貨は本当に米ドルを駆逐するのか

人気ランキング

  • 1

    ミャンマー国軍が「利益に反する」クーデターを起こした本当の理由

  • 2

    無数の星? いいえ、白い点はすべて超大質量ブラックホール 星図が作成される

  • 3

    リコール不正署名問題──立証された「ネット右翼2%説」

  • 4

    北極の氷が溶け、海流循環システムが停止するおそれ…

  • 5

    人民元は2021年中に基軸通貨になるのか?

  • 6

    バイデン政権のシリア爆撃が、ロシア、シリア政府、…

  • 7

    秘蔵っ子辞任「縁故主義」のブーメランが菅政権に突…

  • 8

    聞こえてきた英連合王国分裂の足音

  • 9

    部下が適応障害? 親身に相談に乗り、仕事を減らし…

  • 10

    「庶民派」菅首相を突き刺した、家族スキャンダルの…

  • 1

    屋外トイレに座った女性、「下から」尻を襲われる。犯人はクマ!──アラスカ

  • 2

    バブルは弾けた

  • 3

    がら空きのコロナ予防接種センター、貴重なワクチンは余って山積み──イギリスに負けたEUの失敗

  • 4

    ミャンマー国軍が「利益に反する」クーデターを起こ…

  • 5

    弁護士の平均年収は4割減 過去十年で年収が上がった…

  • 6

    トランプにうんざりの共和党員が大量離党 右傾化に…

  • 7

    リコール不正署名問題──立証された「ネット右翼2%説」

  • 8

    無数の星? いいえ、白い点はすべて超大質量ブラッ…

  • 9

    あらゆる動物の急所食いちぎり去勢も? 地上最凶の…

  • 10

    トルコ宗務庁がトルコの有名なお土産「ナザール・ボ…

  • 1

    フィット感で人気の「ウレタンマスク」本当のヤバさ ウイルス専門家の徹底検証で新事実

  • 2

    ロシアの工場跡をうろつく青く変色した犬の群れ

  • 3

    屋外トイレに座った女性、「下から」尻を襲われる。犯人はクマ!──アラスカ

  • 4

    新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」…

  • 5

    韓国メディアが連日報道、米日豪印「クアッド」に英…

  • 6

    バブルは弾けた

  • 7

    中国はアメリカを抜く経済大国にはなれない

  • 8

    全身が泥で覆われた古代エジプト時代のミイラが初め…

  • 9

    現役医師が断言、日本の「ゆるいコロナ対策」が多くの…

  • 10

    こんなに動いていた! 10億年のプレートの移動が40秒…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月