最新記事

医療

「患者の尿が緑色に変色する」という珍しい症例が報告される

2020年12月7日(月)14時30分
松岡由希子

尿が緑色になった...... Spaseski & Spaseski/The New England Journal of Medicine

<2020年12月3日、医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に、「入院患者の尿が緑色になった」という珍しい症例が報告されている...... >

「入院患者の尿が緑色になった」という珍しい症例が、2020年12月3日、医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)」で報告された。

全身麻酔・鎮静用剤の影響か?

慢性閉塞性肺疾患(COPD)に罹患した62歳の男性患者は、2日間にわたって呼吸困難が続き、米シカゴのワス・メモリアル病院の救急救命室(ER)に来院した。血液中の二酸化炭素濃度が高く、生命にかかわる状態であったため、患者は直ちに集中治療室(ICU)に入院。

人工呼吸器を装着し、全身麻酔・鎮静用剤「プロポフォール」が投与された。その5日後、装着式集尿袋にたまった患者の尿が緑色になった。

尿が緑色になる原因としては、閉塞性黄疸などの副作用や緑膿菌をはじめとするシュードモナス属の細菌への感染などがありうるが、この症例では、プロポフォールが原因とみられる。プロポフォールは、全身麻酔で広く用いられているが、まれに患者の尿が緑色になることがあるという。

尿の変色がどのように起こるのかは、まだ完全に解明されていない。プロポフォールは通常、肝臓で代謝されるが、特定の代謝物が肝臓ではなく腎臓から排出されたとき、尿が変色することがある。このことから、この代謝物が緑色に変色させているのではないかと考えられている。幸い、これは良性の副作用で、投薬を中止すれば回復する。

このような尿の変色が起こるのは1%未満

男性患者の尿は、プロポフォールの投与を中止すると、通常の色に戻った。男性患者は、2週間の入院期間を経て退院し、リハビリテーション施設に移ったという。

このような尿の変色が起こるのは1%未満でまれだが、インドでの2015年11月の症例でも、肥満手術を受けた62歳の女性患者が全身麻酔の導入にプロポフォールを投与され、尿が緑色になったことが報告されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イランの報復攻撃にさらされるイスラエル、観光客4万

ビジネス

レアアース磁石確保に苦慮とフォードCEO=ブルーム

ワールド

カンボジア、タイとの国境紛争で国際司法裁判所に解決

ワールド

米ミネソタ州議員銃撃、容疑者逮捕と報道 標的リスト
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中