最新記事

米大統領選2020 アメリカの一番長い日

中国が本心ではトランプ再選を望む理由

BEIJING VIEWS U.S. IN TERMINAL DECLINE

2020年11月13日(金)15時30分
ラッシュ・ドシ(ブルッキングス研究所中国戦略イニシアチブディレクター)

magSR201113_china2.jpg

(左から)毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦濤、習近平と歴代の指導者は時流を読み、外交政策をその都度変化させてきた THOMAS PETER-REUTERS

だが「100年に1度の大きな変化」にはリスクが付きまとう。

習はアメリカの凋落を確信しているが、その一方で沈みゆくアメリカが必死に中国を抑え込もうとする事態を恐れてもいる。アメリカの「包囲、対決、脅し」を警告する習の演説や中国政府の公式文書にはそうした不安がにじみ出ている。中国のトランプに対する評価にもそれがうかがえる。トランプは長期的には中国にとって望ましい存在だが、短期的にはリスクをもたらす、というのだ。

「中国の望むアメリカ」にノーを

中央党校のある教授が言うように、中国にとってはアメリカが「節度ある態度で自国の没落を受け入れ、有終の美を飾る」ことが望ましい。そうなる保証はないが、中国の多くの専門家は、アメリカには中国の台頭を遅らせることはできても、阻止することはできないとみている。

パンデミックのさなかでのトランプ政権のドタバタ劇を目にして、中国は今まで以上にアメリカの時代は終わったとの確信を深めた。国家安全省のシンクタンク中国現代国際関係研究院の袁鵬(ユアン・ポン)院長は、米政府のお粗末なコロナ対応が「アメリカのソフトおよびハードパワーを損ない、アメリカの影響力は大幅に低下した」と論じている。

結果的に自信を付けた中国は、今まで以上に居丈高に「アジアの盟主」を気取るようになった。香港に対する抑圧的な政策が批判を浴びようが、けんか腰の「戦狼外交」が悪評を買おうが、意に介さないありさまだ。

だがそれは「根拠のない自信」かもしれない。今の中国は難題山積だ。急激な人口減少に対処し、経済成長が鈍化する「中所得国の罠」を回避しなければならない。強気外交のツケも無視できない。そうしたなかで根拠のない自信が意図的につくられている面もある。メディアは無批判に党の方針を伝えるし、専門家の解説もそれに沿ったもので客観的な分析というよりプロパガンダに近い。

それでも根拠の有無はともかく、過剰な自信が膨張戦略を生み出したのは事実だ。今や習政権は危険を承知で大胆な賭けに出ようとしている。

中国のトランプに対する見方は複雑だが、その背後にあるロジックを見ると、アメリカの次期政権が取るべき対応はそう複雑ではない。中国にとって好都合なのは、内向きで分断された沈みゆく超大国アメリカだ。だとすれば次期政権が真っ先に取り組むべきは、そうではないアメリカの姿を見せつけることだろう。

From Foreign Policy Magazine

<2020年11月17日号「米大統領選2020 アメリカの一番長い日」特集より>

ニューズウィーク日本版 ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月24号(2月17日発売)は「ウクライナ戦争4年 苦境のロシア」特集。帰還兵の暴力、止まらないインフレ。国民は疲弊し、プーチンの足元も揺らぐ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、在レバノン大使館の一部職員を退避 渡航回避改め

ワールド

メキシコ「エルメンチョ」死亡で報復相次ぐ、治安当局

ビジネス

米ペイパルに買収観測、複数の買い手が接触との報道 

ワールド

ウクライナ、東欧向け石油施設攻撃 ハンガリーはEU
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 3
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面を突き破って侵入する力の正体が明らかに
  • 4
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 5
    ペットとの「別れの時」をどう見極めるべきか...獣医…
  • 6
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 7
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 5
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中