最新記事

グーグル

米司法省「消費者のための」グーグル解体は筋違い

Break Up Google? Not So Fast, Consumers and Experts Say

2020年10月23日(金)17時25分
スコット・リーブス

しかし調査会社IDCのメディアおよびエンターテインメント部門担当副社長であるカルステン・ワイデは、グーグルの解体は消費者に「より安価な新製品」という恩恵をもたらすと予想する。

「グーグルはあまりにも巨大で、ほかのすべての事業者をぶっ潰してしまう」と彼は本誌に語った。「マイクロソフトは、グーグルと大差はあっても検索部門で2位になるために、何百万ドルもの投資を行っている。競争がさらに激化すれば、もっと多くの企業が力を伸ばすだろう。それは全ての人にとっていいことだ」

たとえば、もしも司法省が訴訟に勝ってクロームが別会社になれば、複数のスタートアップ企業がユーザー向けにより良いプライバシー保護機能の開発で競争し、台頭する可能性もある。あるいはグーグルよりも安い料金を提示する新たな企業が出てくる可能性もあるとウェイドは指摘し、「全体としてみれば、解体は良い効果をもたらすと思う」と語った。

米司法省は、グーグルが競争を阻害する行為によって、検索サービス市場で独占的な地位を保ってきたと主張。広告事業で得た何十億ドルもの資金を携帯電話メーカーやアップルのサファリなどのブラウザ、通信事業者などに支払ってグーグルをデフォルト(標準)の検索エンジンにさせ、競合他社よりも不当に優位な立場を得たと指摘している。

グーグル側は猛反論

司法省は20日に首都ワシントンの連邦地裁に提出した64ページに及ぶ書類の中で、グーグルは長年「排他的な事業契約」によって意図的に「流通経路を断ち、ライバルをブロック」してきたと主張した。

また司法省は、グーグルは各デバイスメーカー(アップル、LG、モトローラやサムスン)、通信事業者(AT&T、Tモバイルやベライゾン)やブラウザ開発事業者(モジラ、オペラやUCWeb)に対して、「毎年数十億ドルを支払い」、自社の検索エンジンが「確実にデフォルト設定される」ようにしてきたとも指摘した。

グーグルのグローバル問題担当上級副社長であるケント・ウォーカーはこれについて、司法省の提訴には「重大な欠陥がある」と反論した。

「利用者は強制されたからでも、代わりの手段が見つからないからでもなく、自ら選んでグーグルを使用している」と彼は声明で述べた。「この訴訟はまったく消費者の助けにはならない。むしろ、より質の低い検索エンジンを促進し、スマホの価格を高騰させ、人々が好みの検索サービスを利用するのを難しくすることになる」

グーグルは多くのデバイスに、デフォルトの検索エンジンとしてプリインストールされているが、ユーザーは簡単な操作で切り換えることができる。ダイアルアップ接続サービスの切り換えを行うために、新しいソフトウェアのCD-ROMを購入してインストールを行わなければならなかった1990年代と今では大違いだ、とケントは指摘した。

また消費者には幅広い選択肢が提示されていて、2019年の全世界のアプリダウンロード数は、過去最高の2040億件に達した。アマゾンやインスタグラム、フェイスブック、スナップチャットやスポティファイをはじめとする多くの人気アプリは、プリインストールされていないとも彼は主張した。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、予想下回るGDPが圧迫

ビジネス

再送-〔ロイターネクスト〕米第1四半期GDPは上方

ワールド

中国の対ロ支援、西側諸国との関係閉ざす=NATO事

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円以外で下落 第1四半期は低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中