最新記事

スウェーデン

新型コロナ、スウェーデンは高齢者を犠牲にしたのか

Sweden's COVID Strategist Wants to Ease Restrictions for Elderly

2020年10月21日(水)18時25分
スー・キム

高齢者に優しい社会というのは嘘? PAli Lorestani/REUTERS

<ロックダウンをせずに独自の感染対策を貫くスウェーデンでは、死者の9割を占める高齢者に対する行動制限も緩和しようとしている>

スウェーデンは新型コロナウイルス対策としてロックダウン(都市封鎖)を実施せず、独自の方針を貫いてきた。若者を含む人口の大半には「密を避ける」程度の感染防止策ですませる一方、死亡リスクの高い70歳以上の高齢者に対しては他人との接触を避けることを求めてきた。今度は、高齢者に対しても感染防止のための制限を緩和する考えだ。

世界的に論争の的になっているスウェーデンの反ロックダウン戦略を指揮してきたアンデシュ・テグネル博士は、BBCラジオ4のインタビューで、「高齢者に、これ以上の完全隔離は必要ないと言うつもりだ」と語った。

新型コロナによるスウェーデンの死者のうち、70歳以上の死者は5269人で全体の89%を占める。そのスウェーデンにとって「優先すべきこと」は、高齢者に課したルールを「減らす」ことだ、とテグネルは言う。「それが今の私たちにとって一番の問題だからだ」

「高齢者もこれからは、一般の人と同じように、大勢の人の集まりを避け、人と距離を取ればいい」と、テグネルは言う。多くの死者を出したことへの罪滅ぼしなのか。

swedendeath.jpg

ホームでの面会も解禁

スウェーデン公衆衛生局のウェブサイトのアドバイスはこれまで、「感染防止の観点から、70歳以上の人には他の人との密接な接触を避けることを要請する」となっていた。

6月13日に規制を一部緩和し、70歳以上でもウイルス感染の症状がなければ旅行をしてもかまわないことにしたが、公共交通機関の使用は避けてほしいと勧告していた。「なるべく車など自力で移動するか、事前に座席を予約できる公共交通機関を利用してほしい」と呼びかけてきた。

10月1日には、半年の間続いていた老人ホームへの訪問禁止も解除された。

「約6カ月の間、老人ホームにいる親族に会いに行くことが禁じられていた。親子や夫婦でも会えなかった。このルールの緩和は国民に強く支持されたと思う。今は訪問できるようになったが、マスクをつけ、距離を保つことは必要だ」と、ストックホルム大学のトム・ブリットン教授(数理統計学)は本誌に語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アマゾンとマイクロソフト、エヌビディアの対中輸出制

ワールド

米、台湾への戦闘機部品売却計画を承認 3.3億ドル

ワールド

ファイザー、肥満症薬開発メッツェラの買収を完了

ワールド

韓国、通貨安定化策を検討 ウォン7カ月ぶり安値
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中