最新記事

クラスター感染

ホワイトハウス集団感染「スーパースプレッダーはトランプ大統領だ」

Accusations of Trump Being a Coronavirus Superspreader Grow

2020年10月8日(木)14時55分
エミリー・チャコール

ホワイトハウスのローズガーデンで行われた最高裁判事指名式典。出席者のほとんどがマスクをしていなかった(9月26日) Carlos Barria-REUTERS/

<クラスターが発生しているのにCDC(米疾病対策センター)に追跡調査を依頼しないのは「大統領が感染源」だとばれるのを避けるためでは>

アメリカでは、ホワイトハウスの職員や最高裁判事候補指名式典の出席者の間で次々と新型コロナウイルスの感染が続々と確認され、ホワイトハウスでの交流との関連が指摘されている感染者は10月7日時点で22人に上った。感染や濃厚接触の疑いは国防総省や米軍幹部にも及びさらに拡大しかねない勢いで、単なるクラスター感染ではなく、普通より大量にウイルスをばらまくスーパースプレッダーによる感染ではないかと言われはじめている。

一部の専門家は、ドナルド・トランプ大統領こそがそのスーパースプレッダーではないかと疑う。

誰がホワイトハウスにウイルスを持ち込んだのかを調べるためには、誰がいつから感染して誰と接触したのか、詳細な接触者追跡が不可欠だ。

だが、大統領の主治医ショーン・コンリーは、トランプが退院した10月5日の夕方に開いた記者会見の中で、トランプがウイルス検査で最後に陰性だったのはいつかという質問に対して、回答を拒んだ。

ジョージ・ワシントン大学の医学部教授のジョナサン・ライナーは、6日夜に放送されたCNNとのインタビューの中で、トランプこそがホワイトハウスの「スーパースプレッダー」だと語った。ライナーをはじめ、多くの政治家や著名人、医療の専門家たちが、トランプが検査で陽性と診断された時期について情報を公開するよう求めている。

ライナーはインタビューの中で、「私は大統領がスーパースプレッダーだと考えている。ホワイトハウスが米疾病対策センター(CDC)に全ての感染例に関する正式な追跡調査を依頼しないのは、起点となった患者0号が合衆国大統領かもしれないと懸念しているからだと思う」と語った。

彼はさらに「大統領は、2日の入院の少なくとも1週間前には新型コロナウイルスに感染していたと考える」とも指摘。一般に、感染してから症状が出始めるまで約1週間かかることをその理由に挙げた。無症状の間にも感染力はあるので、入院までにウイルスをばらまく時間もあったことになる。トランプはマスクもしないし、社会的距離に配慮したりもしないのでなおさらだろう。

感染公表直前に大勢の人と接触

トランプは2日早朝にウイルス検査で陽性だったことを認め、同日夜にウォルター・リード米軍医療センターに入院した。その6日前の9月29日には民主党のジョー・バイデン大統領候補と初のテレビ討論会に参加。その数日前の9月26日には、約200人が出席した最高裁判事候補指名式典で、複数のゲストと接触していた。

この式典の出席者からは、既に12人以上の感染者が出ている。にもかかわらず、ニューヨーク・タイムズ紙によれば、ホワイトハウスは感染者と接触した人々の徹底した追跡調査を拒否している。

6日には、共和党全国委員会の元委員長で現在はMSNBCの政治アナリストを務めるマイケル・スティールも、ホワイトハウス職員と式典出席者の間での感染拡大の原因はトランプだと示唆した。

スティールはMSNBCの番組の中で、5日に退院してホワイトハウスに戻ったトランプがマスクを外してみせた映像に触れ、「彼は、私たちが学んだ全てのルールに背いてマスクを外した」と批判。

「彼こそがホワイトハウスにおける感染拡大の中心人物なのに、みんなそれに触れることを避けたがっている」と彼は指摘した。政権中枢で「多くの人が感染しているのに、その経緯が分かっていない。今後数週間で、どれだけの人が感染するのかも分からない。それなのにトランプはホワイトハウス前に立って好調ぶりをアピールし、『風邪をひいただけだ』などと言っている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独エンジニアリング生産、来年は小幅回復の予想=業界

ワールド

シンガポール非石油輸出、8月は前年比-11.3% 

ワールド

原油先物は小幅安、堅調さ続く 米FRB会合の詳細に

ビジネス

中国、サービス消費拡大へ新経済対策 文化・医療の促
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中