最新記事

動物

進化の結果?獲物を丸呑みせず腹を切り裂いて食べるヘビ

These Snakes Slice Open Toads and Eat Their Organs One-by-One While Alive

2020年10月1日(木)16時35分
アリストス・ジョージャウ

小さな獲物なら丸呑みすることも確認された(写真は、別の種類のヘビ) Michal Fuglevic/iStock

<東南アジアに生息するバンドヘビが、首や背中から毒を分泌するヒキガエルを腹から切り裂き、臓器を食べる適応行動が確認された。下等なヘビでは初めての発見だ>

東南アジア原産のヘビの一種の、極めて残酷な捕食行動をとることが確認された。捕らえたヘリグロヒキガエルの腹を切り開き、まだ生きたまま内臓をひとつずつ食べていくのだ。

学術誌「Herpetozoa」に発表された報告によれば、研究者たちは2016年から2020年にかけて、タイ北東部に生息するバンドククリヘビによる、この「ゾッとする」捕食行動を確認した。

ほとんどのヘビは獲物を「丸呑み」することが分かっており、獲物を切り裂いたり、体の一部を切り取ったりする方法は珍しい。だがタイの研究チーム(ルーイ・ラチャパット大学の研究者2人、Maneerat Suthanthangjai と Winai Suthanthangjaiと無所属の科学者Kanjana Nimnuamは、バンドククリヘビが毒を持つヘリグロヒキガエルを捕らえ、生きた状態のまま牙で腹を切り開く様子を3回にわたって確認した。

3回とも、ヒキガエルはなんとかヘビを振り払おうと、白い毒液を分泌して必死に抵抗。だが最終的にはヘビが「ヒキガエルの腹の中に頭を突っ込み、幾つか臓器を引きずり出して呑み込んだ」と研究報告に書かれている。ククリヘビとヘリグロヒキガエルの格闘は最長で約3時間にも及んだという。

webs201001-snake02.jpg

バンドククリヘビとヒキガエルの格闘  WINAI SUTHANTHANGJAI(ルーイ・ラチャパット大学)


ヘビでは初めて見られた高度な技

報告書によれば、「ヘビが獲物の体内に頭を突っ込み、内臓を取り出して食べ、残りを捨てる行動が確認されたのは、今回が初めて」だ。

研究者たちは4例目として、バンドククリヘビがヘリグロヒキガエルを攻撃し、丸呑みしたケースも確認した。この時のヘリグロヒキガエルは、ほかの3例の完全に成長したカエルに比べて明らかに若く、体も小さかったという。

バンドククリヘビがなぜ、獲物の体を切り開いて内臓をひとつずつ食べるのか、理由は分かっていない。研究者たちは、体の小さなヒキガエルは毒が弱いが、成長したヒキガエルは毒が強すぎて丸呑みできないために、こんな食べ方を編み出したのではないかと推測している(ヘリグロヒキガエルは首や背中にある特殊な腺から強力な毒液を分泌する)。

あるいは、バンドククリヘビがこのカエルの毒に耐性を持っている可能性もあると、彼らは示唆している。体の小さなヒキガエルは丸呑みしたということは、あとの3匹については、体長約90センチメートルの成長したバンドククリヘビにとっても「大きすぎて丸呑みできなかった」のかもしれない。

その両方の理由が当てはまる可能性もある。成長したヒキガエルは体が大きすぎることに加えて、毒も強すぎるために丸呑みできなかったのかもしれない。

報告書の著者のひとりであるデンマーク人研究者のヘンリク・ブリンソーは声明の中で、「現在のところ、理由は一切分からない。だが我々は今後もこの魅力的なヘビについて観察を続けていく考えで、その生態についてさらなる興味深い発見ができることを期待している」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ガザ暫定統治機関の人選を来年早々に発表

ワールド

トランプ米政権、UNRWAに制裁検討か テロ組織指

ワールド

米国防権限法案、下院で可決 上院も来週通過の見通し

ワールド

トランプ氏「CNNは売却されるべき」、ワーナー買収
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中