最新記事

教育

学生世代の約3割が抱える数百万円の借金が、未婚化の一因に?

2020年10月14日(水)13時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

若者の3人に1人が数百万円の借金を背負っている Anchiy/iStock.

<この20年間に学生世代の奨学金利用率は約3倍に拡大し、この世代の全体の3割近くが多額の借金を抱える状態に陥っている>

未婚化の進行の一因として、奨学金の利用増加があるのではないか。突拍子もない仮説に聞こえるかもしれないが、借金のある人との結婚には誰しも及び腰になるだろう。

「新婚早々、夫が消費者金融で200万円の借金を抱えていることが判明した。離婚できるか?」。こんな相談事例が法律系の専門サイトで紹介されていたが、消費者金融を「日本学生支援機構」に変えたらどうだろう。「新婚早々、夫が奨学金200万円を借りていることが分かった」。今時、こんなケースはザラだろう。それくらい、奨学金という名の借金を抱えている若者は増えている。

奨学金を借りている学生はどれほどで、全学生の何%か。以下の<表1>は、1998年と2017年のデータだ。高等教育機関とは、大学、短大、高専、専修学校専門課程をさす。

data201014-chart01.jpg

この20年間で学生数は390万人から373万人に減っている。これは、短大生と専修学校生が減っているからだ。4大生に限ったら、進学率の上昇により増えている。

奨学金利用者数は50万人から134万人に膨れ上がっている。全学生数に占める割合(利用率)は、1998年が12.8%、2017年が35.9%だ。無利子(1種)と有利子(2種)の構成も変わっていて、以前は無利子が多かったが今では逆転している。

筆者が学生の頃は、奨学金利用率は1割ほどでその多くが無利子だったが、最近では学生の3人に1人が奨学金を借りていて、その6割が有利子だ。20年間で奨学金の利用は増え、良くないことに有利子化(ローン化)も進んでいる。

これは学生の中での話であって、同世代全体で見たらそれほどの量ではないのでは、という疑問もあるだろう。だが、今となっては同世代の大半が高等教育機関に進学する。18歳人口ベースの高等教育進学率(浪人込み)は、1998年で68.3%、2017年では80.3%にもなる(文科省『学校基本調査』)。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

豪11月就業者数は2.13万人減、予想外のマイナス

ワールド

米政府、ルクオイル外国資産の売却期限を来年1月17

ビジネス

米FRB、流動性管理へ短期債購入を12日開始 刺激

ビジネス

中国レアアース輸出許可、フォードのサプライヤーが取
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中