最新記事

日本政治

菅政権、携帯料金・デジタル化・縦割行政など「聖域なき改革」でカギ握る調整力 問われる剛腕の振るい方

2020年9月18日(金)18時15分

菅氏とともに1996年の衆院選で初当選を果たし、今回の自民党役員人事で選挙対策委員長に就任した山口泰明議員(自民)は「総務相時代に『ふるさと納税』をやったり、携帯料金を下げさせたりと、昔から菅さんはドラスチックにやる人」と評価する。

新政権が推進する規制改革を巡って山口氏は「菅さんは責任感が強い。好きな言葉は『意志あれば道あり』で、(規制改革に伴う)ハレーションが起きる部分はあるだろうが、上手くまとめていくのでは」と言う。

後に引かない突破力、強権の副作用も

2008年から始まった「ふるさと納税」は、第1次安倍内閣時に総務相だった菅氏が主導した。

元総務官僚の平嶋彰英(あきひで)立教大特任教授は「(第2次安倍政権時に菅氏が)ふるさと納税の枠を2倍に広げ、納税の行政手続きをワンストップでやれと言い出した」という、14年の自治税務局長時の経緯を明かす。

「高所得者が節税策として返礼品を使っていたので(高所得者の)節税枠を広げるような改正はまずいと菅官房長官に問題提起した。返礼品の送付自体に法令上の規制を導入することや、枠に制限を掛ける案も持って行ったが、そもそも理解しようとしてくれなかった」と振り返る。

総務事務次官の有力候補とも目されていた平嶋氏は、15年7月の幹部人事で自治大学に異動となった。「強烈ですよ。菅さんは一度言い出したら後には引かない。人事でもそう。恐怖政治というか、強権政治」と、平嶋氏は当時を振り返る。

こうした面もある菅首相の人物像について「人事権を行使して官僚をコントロールする、政治家としての機能をフル活用するのに長けた人」と、政治評論家の伊藤惇夫氏は指摘する。

同氏は菅首相の今後の政治戦略として、早期の衆院解散・総選挙が取りざたされる中で「国民の懐にプラスになる政策をメインに、生活に密着した政策を打ち出してくる可能性がある」とみる。

ただ、携帯料金に限れば、民間各社の収益を圧迫することで次世代通信5Gやその後のインフラ整備に対する先行投資に遅れが生じる矛盾も招きかねない。

「携帯料金の引き下げを求めるために、電波使用料を上げるという脅しがうまくいけばいいが、時として副作用も出ることがあり得る。批判が高まれば、内閣の支持率にも響く」と指摘する。

(梶本哲史、木原麗花、取材協力:中川泉、日本語記事執筆:山口貴也 編集:石田仁志)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・菅政権の縦割り行政との戦い、「110番」はあくまで入り口
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・菅義偉、原点は秋田県湯沢のいちごの集落 高齢化する地方の縮図
・反日デモへつながった尖閣沖事件から10年 「特攻漁船」船長の意外すぎる末路


20200922issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マツダ、今期業績予想の開示見送り 関税影響4月は9

ワールド

米中、関税率を115%ポイント引き下げ スイスの閣

ビジネス

資生堂、1―3月期営業損益は黒字転換 米関税影響は

ビジネス

塩野義薬、今期11%営業増益を予想 4期連続で過去
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王子との微笑ましい瞬間が拡散
  • 3
    「隠れ糖分」による「うつ」に要注意...男性が女性よりも気を付けなくてはならない理由とは?
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 8
    ロシア艦船用レーダーシステム「ザスロン」に、ウク…
  • 9
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 10
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 5
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 6
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中