最新記事

国際政治

国連創設75周年 グテレス事務総長「課題は多く、解決策は足りない」

2020年9月22日(火)16時33分

国連総会は9月21日、国連創設75年を記念する高官級会合をオンラインで開いた。写真は国連本部。21日撮影(2020年 ロイター/Mike Segar)

国連総会は21日、国連創設75年を記念する高官級会合をオンラインで開いた。グテレス事務総長は、新型コロナウイルスの世界的大流行によって世界の脆弱性が露呈したと指摘し、「多国間の課題は過剰に存在するが、多国間の解決策は不足している」と強調した。

会合はコロナ感染拡大と米中間の緊張感の高まりを受け、193カ国が加盟する国連の存在意義と結束が問われる中で開催された。

中国の習近平国家主席は声明で「世界の情勢を独占し、他国の運命を決め、発展の成果を独り占めする権利はどの国にもない。ましてや、一国が好きなように振る舞い、世界の覇権者かいじめっ子またはボスになるのを認めてはならない。一国主義は行き詰まる」と主張。名指しはしなかったが米国を批判した。

この発言は国連総会向けに録画した演説には入っておらず、中国の国連代表部によると、国連に提出された声明に盛り込まれた。

シャレ米国連次席大使代理は、国連は多くの点で「試みとして成功した」ことが証明されたが、「懸念すべき理由もある」と指摘。

「国連はこれまで、意義ある改革にあまりにも長い間抵抗し、あまりにも頻繁に透明性に欠き、独裁政権の意向にあまりにも影響を受けやすかった」と批判した。

ロシアのラブロフ外相は、一部の国が他国の内政に干渉し、一方的な制裁を発動していることが国際社会の「確執の強まり」を引き起こしたと述べ、暗に米政府を批判。「世界は一段の多国間支援および協力を必要としている」と訴えた。

ドイツのメルケル首相は加盟国それぞれの国益によって「あまりにも頻繁に」国連の理想は未達となることを余儀なくされたと語った。

22日からは首脳級が演説する国連総会の一般討論演説が始まる。ニューヨークの国連本部で参加を予定する首脳はおらず、事前録画した演説が放送される見通し。

首脳らは21日に採択した宣言で、国連創設から現在までに「失望した時が(何度も)あった」と認め、「これら全てがさらなる行動の必要性を示しており、出し惜しみすべきではない」とした。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア開発のコロナワクチン「スプートニクV」、ウイルスの有害な変異促す危険性
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・パンデミック後には大規模な騒乱が起こる
・ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死


ニューズウィーク日本版 ジョン・レノン暗殺の真実
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本の国債管理政策、マーケットとの対話は世界一緊密

ビジネス

午前の日経平均は反落、米ハイテク株安を嫌気 TOP

ワールド

中国、岩崎茂元統合幕僚長に制裁 ビザ制限・資産凍結

ワールド

原油先物は反発、米・ベネズエラ緊張化による供給途絶
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中