最新記事

アメリカ大統領選挙

ケネディ対ニクソンから60年 アメリカ大統領選討論会の軌跡

2020年9月30日(水)19時38分

2000年 ブッシュ vs ゴア
共和党のジョージ・W・ブッシュ候補との最初の討論の際、民主党のアル・ゴア副大統領は、ブッシュ候補が話している最中に聞こえよがしに溜息をついたことで不評を買った。2回めの討論の際、ブッシュ候補は「私たちは皆間違いを犯す。私自身、ときどき発音を間違うことで有名だ」と述べた。この発言のなかでもブッシュ候補はわざと発音を間違えていた。ブッシュ候補が当選した。

2004年 ブッシュ vs ケリー
ブッシュ大統領と民主党ジョン・ケリー候補の最後の討論は、有権者に両者のスタイルの顕著な違いを伝えた。ブッシュ大統領が簡潔な根拠にこだわったのに対し、ケリー候補は自分の主張を裏付けるために多くの事実を並べた。ブッシュ大統領は再選された。

2008年 オバマ&バイデン vs マケイン&ペイリン
副大統領候補どうしの活気はあるが礼儀を失わない討論のなかで、共和党ジョン・マケイン候補の相方であるサラ・ペイリン、民主党バラク・オバマ候補の相方であるジョー・バイデンの両氏は、経済とイラク問題について激突した。

ペイリン氏は頻繁に庶民的なスタイルを披露した。ペイリン氏はある時、「ああ、ジョー、何言ってんの」とくだけた調子で言い、おまけに「畜生!」とまで言い添えた。バイデン、ペイリン両氏とも米国の経済政策をミドルクラスの労働者に優しいものにすることを約束したが、バイデン氏は、金融危機の最中にマケイン大統領候補が「経済のファンダメンタルズは強い」と発言したことを指摘した。オバマ、バイデン組が当選した。

2012年 オバマ vs ロムニー
オバマ大統領は共和党ミット・ロムニー候補との最初の討論で失敗し、支持者を驚かせ、気を揉ませた。だが2回めの討論でロムニー候補は、給与の男女格差に関する質問に対し、知事を務めるマサチューセッツ州政府を組織する際にスタッフ候補のなかに「掃いて捨てるほど女性がいた」と発言した。このフレーズは、ロムニー氏を揶揄するツイートやイラスト、フェイスブックでの同名のグループまで生まれるなど、ソーシャルメディア上で大いに話題になった。オバマ大統領は再選された。

2016年 トランプ vs クリントン
ドナルド・トランプ候補と民主党ヒラリー・クリントン候補による1回めの討論は、米国内で8400万人がテレビで視聴した。大統領選に向けた討論としては過去最多であり、デジタル・ストリーミングの時代にあって異例の数値だった。

2回めの討論は非難の応酬に終始し、クリントン候補は、暴露されたばかりの2005年のビデオ映像におけるトランプ候補の女性に対するセクハラ発言を攻撃した。トランプ候補は、対立候補の夫であるビル・クリントン氏の方が女性に対して酷い態度をとっていると非難して、批判をかわそうとした。

クリントン氏は2017年に出版した著書のなかで、2回めの討論の際、トランプ候補がステージ上で彼女の周囲をうろついたことで身の毛のよだつ思いがしたと述べ、「下がりなさい、気持ち悪い」と言うべきだっただろうかと自問している。だが彼女は結局、「それまでの人生で、私を動揺させようという厄介な男たちに対処してきた経験に助けられて、冷静さを保った」と述べている。3回めの討論で、トランプ候補はクリントン候補を「この不愉快な女」と呼び、敗北した場合に選挙結果を受け入れるかどうか明言を避けた。

(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 非婚化する世界
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月17日号(6月10日発売)は「非婚化する世界」特集。非婚化と少子化の波がアメリカやヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中