バイデン、「ハリス効果」でアジア系取り込みに弾み
経歴への期待
アジア系米国人の権利擁護運動家によると、両親が移民だというハリス氏の経歴は民族の違いを問わず、すべてのアジア系米国人の胸に響く。AAPI系の3分の2は移民1世だからだ。
ハリス氏は12日、両親がそれぞれ世界のまったく違う場所からいかにチャンスを求めて渡米したか、正義を求める誓い、即ち公民権運動がいかに2人を結びつけたかを語った。
インド系米国人の選挙出馬を支援する団体、IMPACTの責任者ニール・マカイジャ氏によると、当時の運動は1965年の新移民法につながり、人種差別的な移民枠を終わらせ、インド系や他の移民に米国の門戸を開くことになった。
マカイジャ氏はハリス氏が、他の政治家が成し遂げたことのなかった方法で移民社会米国の一体化を体現すると話す。
アジア系米国人の出馬を支援するスーパーPACのAAPIビクトリー・ファンドで会長を務めるバルン・ニコレ氏は、トランプ氏が「中国ウイルス」や「カンフル-」といった人種差別的な言葉を使うことも含め、新型コロナ流行を中国のせいにしようとしていることで、アジア系米国人の有権者は社会から疎外されていると説明する。
アジア太平洋政策計画評議会によると、新型コロナ流行以来、アジア系米国人に対する憎悪犯罪(ヘイトクライム)件数は増え、3月19日から7月15日まででは2300件を超えた。
トランプ氏陣営の広報担当者は、同陣営は17年以来、移民たちがいかに社会主義や共産主義体制の国から逃れてきたかを語り合ったり話を聞いたりする多数のイベントを開催してきたと弁明した。
歴史的に見れば、共和党も民主党もアジア系米国人有権者への働きかけは少なかった。ビクトリー・ファンドのニコレ氏によると、アジア系有権者の投票率が低いことが、彼らに多くの資源を投下しなくてよいと選対陣営が判断する悪循環を作り出している。
さらにアジア系の人々の選挙への関与を難しくしている要因がある。AAPI系の主要な人口グループ内で、共通言語的なものがまったくないというハードルだ。「そのため選挙プランが多重に必要になる」とニコレ氏は話す。
バイデン陣営はAAPI系向けに多くのイベントを主催している。今月13日にはウィスコンシン州でAAPI系に向けて、15日にはインドの独立記念日に合わせたイベントといった具合だ。
バイデン陣営のジャニ氏によると、同陣営はこの秋には、それぞれ特定の民族系に照準を合わせた電話キャンペーン拠点を設置し、それぞれに適切な言語を話すスタッフを詰めさせて一斉に支持集めの電話をかける作戦という。
ハリス氏が副大統領候補になる一方で、大統領選当日に実施される各地の連邦議員選挙でも、過去最多のアジア系米国人が出馬に動いているという。
(Joseph Ax記者)

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