最新記事

感染症対策

米科学者「ヒトチャレンジ」治験へコロナウイルス株製造へ 倫理面の問題も

2020年8月15日(土)10時47分

米政府の科学者らが、健康な人に新型コロナウイルスワクチンを接種した後、意図的にコロナウイルスに感染させてワクチンの有効性を調べる「ヒトチャレンジ」臨床試験(治験)の実施を視野に、コロナウイルス株製造などへの取り組みを始めたことが、ロイターの取材で分かった。写真は4月10日撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic)

米政府の科学者らが、健康な人に新型コロナウイルスワクチンを接種した後、意図的にコロナウイルスに感染させてワクチンの有効性を調べる「ヒトチャレンジ」臨床試験(治験)の実施を視野に、コロナウイルス株製造などへの取り組みを始めたことが、ロイターの取材で分かった。

米国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー感染症研究所(NIAID)はロイター宛の電子メールで、こうした取り組みは予備的なもので、製薬のモデルナやファイザーが現在行っている大規模な被験者を対象とした後期治験(第3相試験)に取って代わるものではないと説明した。

さらに「コロナのワクチン候補や治療法を完全に評価するためにヒトチャレンジ試験の必要性が生じた場合に備え、当機関として試験を実施する際の技術的・倫理的課題に関する調査を開始した」と明らかにした。

取り組みには、適切なコロナウイルス株の製造や、治験プロトコールの作成、治験実施に必要なリソースの特定などが含まれる。

ほとんどのワクチン治験は、故意ではない感染に依存しており、感染が起きるまでに時間がかかることがある。英アストラゼネカや米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)など一部の製薬会社はこれまでに、必要に応じてコロナワクチンのヒトチャレンジ治験を検討すると表明している。

ヒトチャレンジ治験は通常、ウイルスが広く流行していない場合に行われる。多くの科学者は、コロナ感染で病気にかかった人への「救命治療法」が存在しないため、コロナに関するヒトチャレンジ治験は倫理的に問題があると考えている。

J&Jのグローバル・ワクチン部門責任者、ヨハン・バン・フーフ氏は今週、ロイターとのインタビューで、世界中でヒトチャレンジ治験のための準備が進んでおり、同社としてもそうした流れに従っていると表明。ただ倫理的な問題が解決され、効果的な治療法が利用可能にならない限り、こうした治験は行わないとした。

ジョンズ・ホプキンズ大の公衆衛生大学院でワクチンを研究し、これまで10件以上のヒトチャレンジ治験を手掛けたアンナ・ダービン氏は、ヒトチャレンジ治験の立ち上げに9─12カ月かかり、治験会場などの調整にさらに6カ月を要すると話した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新たな「パンデミックウイルス」感染増加 中国研究者がブタから発見
・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる


2020081118issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
楽天ブックスに飛びます

2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イランと制裁緩和など緊密に協議とトランプ氏、武器供

ワールド

トランプ氏は早期紛争終結望む、イランと誠実交渉指示

ワールド

ヒズボラが攻撃停止か、イスラエルはレバノン攻撃継続

ビジネス

CKハチソンのパナマ子会社、港湾買収巡りマースクに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 5
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    「王はいらない」800万人デモ トランプ政権への怒り…
  • 8
    【後編】BTS再始動、3年9カ月の沈黙を経て──変わる音…
  • 9
    キッチンスポンジ使用の思いがけない環境負荷...マイ…
  • 10
    5日間の寝たきりで髪が...ICUに入院した女性を襲っ…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 7
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 10
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中